第2節【戦争の灯】

正生徒会、現る―(1/11)


──リンゴーンリンゴーン。


朝6:30。

目覚めの鐘が鳴りました。

私は朝が苦手ですが、鐘のおかげでパッチリ目が覚めました。

お礼は言いません。

あまりの大音量でめちゃくちゃビックリしましたから。

思わず「ぶへぇうあ!!」と、この世のものとは思えない声を上げてしまいました。


「心臓に悪いんだよ、バカッ」


素で悪態をつき、7時半の朝食に間に合うよう支度を始めます。

まだ二日目なのに、疲労感がハンパないです。


制服に着替えている時に思ったんですが、この学校って制服の意味があんまりないような気がします。

なんで私服じゃないんだろ……。

誰の趣味だ?


まあ、どうでもいっか。


支度が終わって部屋を出ると、他の女の子達に混ざってぞろぞろと食堂へ向かいます。

誰一人挨拶をしない。

私もしない。

人見知りなので。


ホントにいろんな子がいるなぁ。

仮面ライダーの変身ベルトを三つつけてる子とか、両手にメガホン持ってナンデダロ~やってる子とか。

ガイコツの被り物被ってる子、怖いんですけど。

背中に〝話しかけたら呪いまっせ〟って書いてある。

どういうテンション?


食堂につくと、当然のように着席しているナルシーさんを発見。

相変わらずのにくきゅう顔。


「トロちゃんオッハー。今日はちゃんと10分前に来たわね」


「オッハ~デース。私ニモ学習能力ハ有リマ~ス」


そういえば、なんで5分前じゃないんだろ。


「このクラスは集まりがいいわね~、富士子は嬉しいわ♪」


まだ来てないのは3人くらいかな。

あ、マッケンさんがいる。顔色悪そう。

一応、昨日のこと聞いてみるかな。


「マッケンサン、オハヨ~ゴザイマース。昨日ハ大丈夫デシタカ~?」


「あ、トロさん……おはようございます……。昨夜のこと、ご存知なんですね……」


「チョード、隣ニ居タノデ~」


「そうですか……。僕は大丈夫です……かすり傷でしたから……」


「一通リハ~、カスサンカラ聞イタノデスガ~、何故、マッケンサンハ~倒レテイタノデスカ~?」


「確か……カスさんがマッチを取り出した時に、危ないと思って防ごうとしたら……頭突きをされて……」


猪かよ!


「ソーデスカ……ゴ無事デ何ヨリデース」


「そうですね……生きていてよかったです……」


悪いけど、マッケンさんは早死にしそうなタイプだと思う。

いろいろと弱そうだし。


「イヤッフゥ~!!!! みんな!! 待たせたな!!」


待っていたのはナルシーさんくらいですよ、カスさん。


「ギリギリ10分前ね、ピスタチオ」


「おぅ! 遅刻はしないぜ、マロングラッセ!」


なんだその呼び名は!

朝からノリいいな二人とも!


「カスサン、オハヨウゴザイマース」


「おぉ! おはようだぜトロ! 昨日の夜は激しかったぜトロ!」


私はたいしたことしてないですけど。


「カスさん、おはようございます……」


「おぉ! おはようだぜマッケン! 昨日の夜は激しかったぜマッケン!」


謝れよ。


「まだ来てないのは……ピーラーだけね。まったく、レディーを待たせるなんて最低な男だわ」


彼女じゃあるまいし。


「ピーラーのデザートは富士子がいただいちゃうんだか──」


「きゃあぁぁぁぁ!!!!」


ん!?

おなごの悲鳴!?

御用だ御用だ!!


「何!? 朝食泥棒!? そんなの富士子がやっつけてあげるわ!!」


いや、違うと思う。


「──おっと、バレちまったか」


あ、ピーラーさんだ。


「ちょっとアンタ! 何すんのよこの変態!!」


「朝のスキンシップだろ~ホレッ」


「きゃっ!!」


…………。

スカートめくりしてる……。


「可愛いイチゴちゃんだな~♪」


「さ、サイテー//!!」


高校生でイチゴ柄履いてる人って本当にいるんだ。

ちょめちょめ100%思い出しちゃったよ。


「ちょっとピーラー!! 早くこっちに来なさーい!!」


富士子様がお怒りだ!

さっさと来いピラピラ!


「朝からうるせぇな小豚子ナルシー」


「豚って言うなっ!!」


B組、無事に全員揃いました。

でも喧嘩はしないでください。


「ナルシーサン、今日ノ朝食ハ何ナンデスカ?」


「今日の朝食は~鯖の煮込み定食よ♪」


サラリーマンのランチみたいだな。


「白米とお味噌汁はおかわりし放題だから♪」


ナルシーさんめっちゃおかわりしそ~。


「よしっ!! この中で誰が一番早く食べ終わるか競争しようぜ!! 優勝者はドベケツに願いを一つ叶えてもらえるんだ!!」


またカスさんはそんなこと言い出す……早食いはお腹に悪いですよ。


「いいわねそれ、挑むところだわ!」


ナルシーさんのっちゃった。

これは強制的に全員参加させられるパターンですね。


「よし、お前ら! さっさとメシを取ってこい!」


そう言って飛び出すカスさん。

他の皆さんも続きます。

……どうしよう、早食いはかなり苦手なんですが……。

まあ、とりあえず私も取ってこよう。

席立って、お盆取って、お箸取って、鯖の煮込み取って、和え物取って、ご飯取って、お味噌汁取って……あぁ、和食なのに牛乳なんですね、を取って、席に戻ります。

カスさん、ご飯を超大盛りにしています。


「ヘイ!! 東京タワーライスだ!!」


そこスカイツリーライスじゃないんだ。

あ、スカイツリーはナルシーさんか。

チラリ。


「フッフーン! 今日はこの程度にしといてあげるわ!」


富士山!?

富士山ライス!?

なにあの馬鹿デカイお茶碗!!

特注品じゃん!!


「──では、揃ったクラスから合掌をどうぞ」


そういえば、昨日の夕飯、私とカスさんとマッケンさんいなかったのにお許し出たんだ。

さてはナルシーさんの顔パスだな。


「よし、いくぜお前ら!! ──合掌!! いただきま~す!!」


「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」


はてさてどうしたものか。

早食い競争するって言ってたけど、実際優勝狙ってるのはカスさんとナルシーさんだけみたいだし、私はドベケツにならないよう頑張りますか。

なに、大丈夫さ。

パッと見、遅そうな子はちらほらいるし、マッケンさんだっていかにもスローペース──じゃない!?


なんだあれは!?


箸が滑るように動いている!!

食べ物がスルスルと消えてゆく!!

牛乳を飲み込むというより流し込んでいる!!

昨日もあんなんだったっけ!?

これがキングの本気なのか!?!?


あっ。


「……ごちそうさまでした……」


食べ終わったぁぁぁぁ!!!!

早い!!  ハヤブサすぎるよマッケンさん!!


「「ブフォワァッ!!!!!!」」


わぁっ!!

あまりの早さにカスさんとナルシーさんが噴いた!!

汚いよバカぁ!!


「ママ、ママ、マッケン!? お前ママ、マッケン!?!?」


ママではありませんよカスさん。


「ママママママママママ」


ナルシーさんが壊れてるぅ!!


「あ、あの……なんか……すみません……」


いや、謝らなくてもいいですよ。


「マッケンサン、早イデスネー」


「早食いは、やろうと思えば……できますので……」


優勝したかったんだ……。

でもよかった。

マッケンさんなら最下位の人にも無茶な命令とかしなさそうだし。


「くそっ!! 俺の野望が!!」


「富士子の野望が!!」


本当によかった。

恐ろしいよ二人とも。


──そして、全員が食べ終わり、ドベケツが決定しました。


……はい、私です……。


「トロはトロトロのろまのトロだな!!」


うるさい黙れ。

一位がマッケンさんだったから安心してゆっくり食べたんだよ~だ。


「富士子、残ってた白米とお味噌汁、全部おかわりしちゃったわ」


それは残飯処理というのでは。


「それにしても、ピーラーが意外とスローペースだったな」


そうそう。

私とあんまり変わりませんでしたからね。


「僕は作る専門なんだよ」


コックかよ!


「じゃあ今度、富士子に特大パエリア作ってね♪」


「任せとけ」


快諾!?

不良のくせに気前いいな!

料理好きなんだな!

私はカチコチの目玉焼きしか作れない!


「──で、マッケンはトロに何を命令するんだ!?」


「え? いえ……僕は別に……何も……」


「はぁ!? お前この勝負の主旨わかってんのか!?」


「僕はただ……なんとなく……一番になってみたかっただけですので……」


フハハ、カスさん敗れたり~!


「それじゃあ面白くねぇだろ!!」


面白くなくて結構。


「……あ、じゃあ……保留ということで……」


保留するんだ。

まあいっか。

どうせいつの間にか忘れちゃうパターンだろうし。


「なんだよ期待してたのによ~!」


何を期待してたんだ。


「あっ、じゃあその権利を俺に横流しするっていうのは──」


「ダメデース! ノンノン! 男ナラ真ッ向勝負デース!」


「チッ、しょうがねぇなぁ~」


油断も隙もないですね。


「──皆さーん! それでは、後片づけが終わったクラスから体育館に向かってくださーい! 全校集会を行いまーす!」


え、また集会?

めんどくさいんですけど、いろいろと。


「よし!! B組が一番乗りだ!! 行くぜお前ら!!☆」


テッテケテ~。

カスさんが走り去っていきます。


「おい!! ちゃんと後片づけしてけよカス!!」


そう言いつつピーラーさんも駆け抜けていきます。

逃げたな金髪め。

あ、走りながらスカートめくってる。

キャラ守るなあの人。

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