第3話 メイドのお金稼ぎ
なんでこんなことしてるんだろ?
俺たちは空き缶を拾い集めていた。理由はよくわからない。メイが突然空き缶を拾い始めたんだ。それで、俺もなんとなく手伝い始めた。暇だったし。
「なあ、空き缶なんて集めてどうするんだ?」
「お金を稼ぎます」
お金を稼ぐ? そういえば、前にテレビで空き缶を拾い集めるホームレスを見たことがある。空き缶は金になるのか。
メイは次々と空き缶を拾い集めていく。そのスピードは俺の倍だ。拾うスピード自体は俺とあまり変わらない。ただ、彼女は空き缶を見つけるのが上手い。そうして、袋がいっぱいになるまで空き缶を集める。
「で、この空き缶をどうすればお金になるんだ?」
「資源買い取り業者のところへ持ち込みましょう。そこで買い取ってくれるはずです」
そういうと、彼女は歩き出した。俺も空き缶を持ってついていく。
資源買い取り業者に持っていくと、空き缶は二袋で440円になった。数時間、二人がかりで拾い集めたのにたったこれだけか。空き缶拾いで生活するのは無理そうだ。一度拾ってしまえば、しばらく空き缶は落ちていないだろうし。
このたった440円をどうしようか。ジュースとお菓子でも買うか? そういえば、朝に魚を食べただけで、他には何も食べていない。お腹がすいてきた。
「やっぱり空き缶を拾うだけじゃ大して稼げないな。どうする? このお金でお菓子でも買うか?」
「いえ、買うべきものは決まっています」
「決まってる……?」
「ええ、行きましょう」
彼女の後をついていくとたどり着いたのは、チェーン展開している大手中古本の販売店だった。こんなところで何を買うんだろう? 死ぬ前に読みたい本でもあるのか?
彼女は隅から隅まで本屋を見て周り、4つの本を手に取った。そしてレジへ持っていく。会計は、440円ちょうどだった。全額使うなんて聞いてないぞ。半分は俺が拾った空き缶なのに。
「では行きましょうか」
「行くって、どこに?」
「古本屋です」
古本屋……? もうお金もないのに?
メイとやってきたのは、先ほどの大手チェーン店とは全く違う古本屋だった。歴史的な価値を感じる古本ばかりが置いてある。先ほどの店のような、一回読んですぐに売ったかのような大衆向けの中古本は見当たらない。
メイは本屋の店主に話しかけ、先ほど買った本を売りたいと言った。おいおい、さっき買ったばかりの本を読みもせずに売るのか? というか、こんなところで買い取ってくれるのか? さっきの店とは置いてある本の質が違うような気がするのだが。
しかし、店の店主はなんと8000円で買い取ると言った。
440円で買った古本が8000円!? どういうことだ? あの大手古本屋チェーン店に、そんなに価値のある本が置いてあったとでもいうのだろうか。
その後、メイは様々な古本屋や古着屋に入り、売買を繰り返した。そうして、徐々にお金を増やしていった。こうやって古本などの売値と買値の差で稼ぐことをせどりというらしい。
メイは、せどりで少なくない現金を稼ぎ出した。
俺たちは稼いだお金でホテルに泊まり、その日暮らしをしながらせどりを続けた。メイの目利きはかなりすごい。百発百中だ。一見あまり価値のなさそうな古本や古着の価値を正確に見極め、売買を繰り返す。この古本や古着の知識をどこで手に入れたんだろう?
しばらくせどりを繰り返し、ある程度お金を貯めたところでメイが言った。
「ご主人様のスマホ、何か月料金を滞納してますか?」
あれ? 俺はスマホの料金を滞納していると話したっけ? まあ、持っているのに全く使わなければそりゃバレるか。
「3か月だったかな……?」
「ではその料金を払いに行きましょう」
メイは俺を連れ、携帯ショップに行き滞納していた携帯料金を支払う。すると、すぐにスマホが使えるようになる。
「なあ、なんでこんなダメ人間みたいな俺に良くしてくれるんだ? 会って間もない俺の携帯料金の滞納分まで払ってさ」
「ダメ人間……あぁなんて素敵な響きでしょう。別に、良くしているつもりはございません。本格的なご奉仕はむしろこれから。携帯電話の料金を支払ったのは、そのスマホが必要だったからです。少しお借りしてもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ」
俺は検索履歴やお気に入りを素早く削除し、メイにスマホを差し出した。
俺のスマホで何をするのかと思ったら、どうやらネットオークションやフリマアプリを使いたかったようだ。そこでメイは、古着屋や古本屋で買ったものをネットで売り始めた。なるほど、このためにスマホが必要だったのか。
これにより、せどりの効率が格段に良くなった。また、ブログを書き始め、そこに広告をつけて広告収入を得始めたり、チャットアプリなどで使えるスタンプの販売まで始め、様々なネットビジネスに手を出していった。
稼ぎはどんどん増え、気が付けばいつの間にか大金を手に入れていた。
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