第13話 大杉栄と同性愛

堅太郎「これ、タイトル迷ったんだよね。『明治の自由恋愛』にしようかなぁと」

巳代治「自由恋愛だと話が広がりすぎるし、これでいいんじゃないの……。それに明治のって言われちゃうと、なんか明治人がそうだったみたいに思われるとあれだし……」

堅太郎「まぁでも一応、大杉さんが提唱した自由恋愛の話をしておこうか」


堅太郎「甘粕事件で有名な作家・大杉栄は自由恋愛の提唱者でした。彼の自由恋愛三ヶ条はこういったものです。

一、互いに経済的に自立する

二、同居することを前提にしない

三、互いの性的自由を保証する」

巳代治「……大杉、全然、経済的に自立してないじゃない。確か、女性たちに金もらって遊んでたでしょ」

堅太郎「『日影茶屋事件』だね。話を飛ばさないでー、巳代治。でもまぁ、女性たちのことも語っておこうか」


巳代治「僕たちの仲間であり、伊藤博文さんの娘婿になった末松謙澄くんって人がいるんだけど、彼が毛利家の『防長回天史』を編纂するために、同郷の人として招いたのが著述家の堺利彦氏。で、堺さんの所に大杉は居候していたんだ」

堅太郎「そして、その居候中に堺さんの奥さんの妹さんに暴行する。そういう意味で、ね」

巳代治「堺さんの義妹さん、婚約してたんだよね……」

堅太郎「そう。その暴行により、婚約は破棄される。で、大杉さんは強引な暴行の後、強引に結婚を迫る。自分の着ている浴衣に火をつけて、結婚しないなら焼身自殺するって」

巳代治「そのとき、大杉は未亡人と同棲してたのに、よく言えるよね……」


堅太郎「火をつけてまで結婚を迫ったけれど、自由恋愛主義者だから入籍はしなかった。その後、のちに社会党の衆議院議員になる神近市子、作家の伊藤野枝とも関係を持って、彼女たちからお金をもらって生活する」

巳代治「それで伊藤野枝に子供が出来て、愛情がそこに集中したと思った神近市子が、伊藤と大杉が密会していた日影茶屋に乗り込んで、大杉を刺す。でも、これは大杉の態度もどうかと思うよ。大杉が市子に“許さない”と言い放って“ ぼくに貸した金があるから、それをかさにきて暴言を吐くんだ”って紙幣を投げつけたみたいなの読んだことあるし……」

堅太郎「それは小説の創作かもだけど、まぁ態度があれだったのはあるかもね。自由恋愛言いながら、実質は大杉さんが女性たちを渡り歩いて、そこからお金貰ってる状況だったから」

巳代治「事件当時、神近は身を粉にして大杉に尽くしていたのに可哀想だって感じの世論だったよね」

堅太郎「そうだね。だから彼女は2年に減刑されて、その後、出所した」


堅太郎「さて、それじゃ大杉さんと同性愛の話だけど」

巳代治「……まだ続くの? もう、女性関係だけでお腹いっぱいなんだけど」

堅太郎「ここからが本題なんだから頑張って」


堅太郎「明治の頃も主流ではないですが、お稚児さんだの男性同士のは噂されました。薩摩が有名ですが、薩摩に限らず言われたり、学生の中では実際にあったわけです」

巳代治「で、大杉の話は?」

堅太郎「そうそう。大杉さんは明治32年、名古屋陸軍地方幼年学校時代に入学するのだけど、かなりひどかったらしいよ。古参生の仲間になって、同級生にも傍若無人でやりたい放題だったみたい。修学旅行の時は下級生に性的なあれこれをして罰を受けてるし」

巳代治「……」

堅太郎「同じ部屋の中村君といい関係だったらしいけど、でも、それも元々は同室生徒の前でボコボコに殴りつけたとかあったし。ちなみに他者の発言じゃなくて、本人の自伝にこれが書いてある」

巳代治「なんだっけな。何かの本で愛情とか信頼とかそういうんじゃなくて、大杉の同性愛はかなり乱暴だったみたいにあったけど、別に同性愛に限らず、大杉って元々そういう性格なんじゃないの」

堅太郎「そうかもね。幼年学校の中で同級生と喧嘩を起こして、ナイフで刺されてるし」

巳代治「良く刺される男だね……」


巳代治「なんか今回の話、どっと疲れた。自由恋愛でも同性愛でもなんでもいいんだけど、アナキストとか関係なく、大杉、荒れすぎでしょ……」

堅太郎「あ、それじゃ、最後に面白いネタを教えてあげる。大杉さんが行った名古屋陸軍地方幼年学校って、実は甘粕大尉も行ってたんだよ」

巳代治「えっ……同じ学校だったの?」

堅太郎「幼年学校は13~16歳の学校だけど、大杉さんは明治18年生まれで明治32年に入学したっていうから14歳だね。甘粕さんは明治24年生まれで6歳下だから、時期は被らないと思うけどねー。まあ、創作ネタとしては面白いよね」

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