第11話 金カム210話の満鉄の話をつらつらと

巳代治「こんにちは、今回はゴールデンカムイ210話の満鉄の話について、つらつらと思ったことを話していきたいと思います」

巳代治「これを書いてる人の頭の整理みたいなものなので、ゆるーくお読みください」


巳代治「鯉登少尉の言っていた“本質は経営の仮面をかぶった東北アジアへの日本領土の拡大だ”について」


堅太郎「これは児玉源太郎大将の『満州経営梗概』の文言のことじゃないかな。“陽ニ鉄道経営ノ仮面ヲ装イ、陰ニ百般ノ施設ヲ実行スルニアリ”っていうの」

巳代治「んー……ちょっとそれだと変じゃない?」


堅太郎「“百般の施設を実行する”だからね。これは多分、後に出来る満鉄地方部の話かな。病院、公園、学校、ホテル、消防なんかを鉄道付属地に満鉄は作ることになるからね」

巳代治「鉄道付属地って支配形態は日本オリジナルじゃないんだよね。ロシアが考え出した形で、満鉄は東清鉄道の一部だからそれを引き継いだ感じ」


堅太郎「“東北アジアへの日本領土拡大”は、満鉄というより陸軍の“日満一体”が近いかな。日露戦争で日本軍の将兵たちは満州の地でたくさんの血を流して勝利した。その事実から満州と日本との一体感が軍人の中にあった、っていう話が昭和史の研究家の本に載ってたね」


巳代治「ちょっと話が前後するけど、鶴見中尉の“戦友たちは今も満州の冷たい土の下”っていうのは、さっきの“日満一体”って言葉に似た感じがあるね」

堅太郎「日露戦争から始まった満州統治の願望が徐々に高まって昭和になって実行される。それは満州の地でたくさんの将兵が散ったという気持ちから繋がる伝統的な日本陸軍の基本政策だって書く本もあるね」

巳代治「昭和になると『満蒙領有論』が盛んになるしね。誰かを介したり、何かを介したりするのではなくて、日本が直接支配すべきっていう昭和陸軍の思想に、鶴見中尉は近いのかもしれない」


巳代治「それじゃ満鉄を作った児玉さんもそのつもりだったのかな?」

堅太郎「さあ、どうだろう。児玉さんは戦時中も、戦争が終わった後も“台湾に一刻も早く帰りたい、台湾で生涯を終えるんだ”って後藤さんに手紙を送ってたからね。ただ『満州問題に関する協議会』のときに、主権を誰か一人に委ねて、一切を指導する官庁を作ってはどうかって、児玉さん、提案してるんだよね」

巳代治「後藤さんと話していた、満州鉄道庁の話だったのかもね。でも、伊藤さんは“満州は決して我が国の領土ではない。純然たる清国領土である”ってたしなめてたね」


巳代治「で、“本質は経営の仮面をかぶった東北アジアへの日本領土の拡大だ”の結論は?」

堅太郎「ゴールデンカムイの世界だと満鉄は、陸軍の傀儡として始まる感じなのかもしれないね。あとね、ここまでの参照している史料は、わりと満鉄側寄りの資料なんだよね。違う方角から見た史料だと、満鉄は経営の皮を被った大陸進出者と見えたかもしれないし、そう捉えてる資料もあるのかもしれないよ」


巳代治「次。花沢中将が言ってた“経営はうまくいかない”について」


堅太郎「これは山縣有朋元老も『戦後経営意見書』で言ってたんだよね。ロシア南下を阻止するため、軍用鉄道として活用しようって反面、経営的には成り立たないことを自覚しているって」

巳代治「まぁ、前の話でも言ったけど、鉄道は元々ロシアのだし、土地は清の土地だし、複数の国が干渉してくるかもだしね。うまくいかなそうだよね」

堅太郎「国内でもバラバラだからね。伊藤さんみたいにそこは純然な清国の土地だろって人もいれば、大陸への足掛かりだって人もいたかもだし。満州の内部も軍部、満鉄、外務省の三つ巴だしね」


堅太郎「後は何か思いつくことはある?」

巳代治「んー……薩摩の人からすると面白くないとかかな。児玉さんにしても、関東総督になった大島さんにしても長州の人だからね。ちなみにこの大島さんの玄孫が安倍総理です」

堅太郎「急に現代になったね。まあ、経営はうまくいかないっていうのは、実は満鉄推進の人までそう思ってて、株売るまではドキドキだったから、おかしくない意見だよね」


巳代治「“花沢閣下が自刃することによって満鉄の計画は突き進んだ”。進むと思う?」

堅太郎「花沢閣下の情報が亡くなるシーンくらいしかないからわからないけど、師団長でしょ。関東総督・都督だった大島中将も日露戦争の時は第三師団長だったからね。同じくらいの立場だと考えれば、何かあってもおかしくないんじゃないかな」


巳代治「月島軍曹が“満鉄と花沢閣下の関係”って言ってたから、何かしらゴールデンカムイの中では特別な関係があるのかもしれないしね」

堅太郎「『ドグラ・マグラ』で有名な夢野久作くんのお父さん、杉山茂丸みたいなフィクサーと関係があるのかもしれないしね。まぁ……僕も杉山くんとは福岡という同郷繋がりでいろいろあるんだけど」


巳代治「月島軍曹と言えば“政変をおこし、軍事政権を樹立。その先に我々の戦友が眠る満州が日本の領土に”について、どう思う?」

堅太郎「政変起こされると僕たちは困るけど……まぁ、満州を日本の領土にしたいなら、政変起こして軍事政権にしないとだね。僕たちの親分だけど、伊藤さんが邪魔すぎる」


巳代治「伊藤さんは国際協調重視派で、日露戦争も反対するし、関東州が軍政にならないようずいぶん邪魔したからね。軍備拡大も阻止に回るし、さっきも言ったけど“満州は決して我が国の領土ではない。純然たる清国領土である”とか言っちゃう人だから、邪魔だろうね」

堅太郎「もし、ゴールデンカムイの世界に伊藤さんみたいな文官がいたら、まず排除して、軍事政権にしないとになるからね」


堅太郎「そう考えると、花沢閣下も大陸進出反対派って考えていいのかな?」

巳代治「さあ、どうだろう。満鉄はむしろ伊藤さん側に近い。後藤さんたち満鉄の人たちは軍人ではなく、僕たちと同じ官僚タイプの集まりだからね。満鉄がないならないで、軍には都合がいい。鉄道は軍用鉄道にして、外務省を牽制しながら、自分たち軍部が南満州の関東州を支配できる」


堅太郎「だとしたら、保留かな」

巳代治「でも、鯉登少尉が言ってた考え方で行くと、満鉄は陸軍の傀儡としてゴールデンカムイに登場していることになる。それに反対なら、大陸進出反対派と考えていいのかもよ」

堅太郎「それじゃ鶴見中尉は大陸進出に反対して邪魔だから花沢閣下を殺したってことでいいのかな、今のところは」


巳代治「あまり新しいことのない話だったね」

堅太郎「まぁ書いてる人間の頭の整理みたいなものなので。お付き合いいただき、ありがとうございました。また何かあったら、ここに書きまーす」

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