第2話  すぐにスイスに飽きる

一か月後。


「なんか、スイスつまんないんだけど、あんた休みとれないの?」

「今ちょうど、ツアーの仕事終わって、今なら一か月ぐらいなら休みとれるよ!」

東京に住んでいる友人牧子との、スカイプの会話である。

明日香のベルンの家に滞在しながら、一か月、スイスを探索した私は、すでにスイスに飽きていた。

だいたいにおいて、明日香は平日は仕事があるので私とぶらぶらでかけるわけにはゆかない。

日本なら、私はコミュ力モンスターと呼ばれているので、一人でぶらついても、そこらへんの人間に話しかけて暇がつぶせる。

が、いかんせんスイス。

言葉の壁があるのである。

しかも!

スイスというのは、フランス語圏と、ドイツ語圏に分かれていて、スイス語といえば、なまったドイツ語。

テレビ番組もドイツ語。

英語もぺらぺらではない私にはハードルが高すぎる。

そして、移動に使う電車がくそ高いんだよね。

お嬢様の私もびっくりなスイスプライス。

都市移動したら、往復運賃10000万円。新幹線かよ。大人になってから乗ったことないけど。

そして。

スーパーの肉や魚も高い!

スイスで、一番安いものといったら、ヨーグルトぐらい。

ヨーグルトが1ユーロきってて、いろんな種類あるんだけど(かなり変わった味まで売っている。あなたはコーヒー味のヨーグルトって食べたことありますか?)、肉や魚は日本の何倍もする。

 実例をだすなら、日本で売っている580円ぐらいの豚肉の細切れが、スイスプライスだと2500円するのだ。

魚も、なんとなく生臭い。

日本のように周りが海に囲まれていないスイスは、陸地が広くあるといえば、湖ぐらいだからだろうか。

札幌のスーパーの魚と比べると、鮮度がいまいちなのだ。

ベルンからジュネーブまで一人で遊びに行った際に、電車で一緒になった日本人の歯医者のおじさんが、

「日本から研修でスイスに今単身赴任してるんだけど、毎日、仕事終わりに同僚からカフェに誘われるんだけど、カフェなんか毎日行ってたら、給料使いきっちゃうよー。」と弱音を吐いていた。

歯医者のおじさんすら、物価が高いと値を上げるのに、さすがの私も、金を使うきにならない元のとれない物価の高さ。

そして、外食もさほどうまいものもないのに、高い!

札幌のランチで1000円ぐらいで食べることができる料理が、3000円ぐらいする感覚。(さらにチップ払うんだよ!)


た、た、耐えられん。


ということで、スイス脱出を謀るべく、海外に誘ったらきそうな東京にいる牧子にスカイプする。

「マリちゃんはどこ行きたいの??」

「ウィーンとかよさそうじゃない?今居候してる家の友達も、ウィーンはごはんも美味しいし、物価もそれほど高くないし、住みよい街だった。って言ってたし。ウィーン行こうよ。」

スカイプで話しながら、明日香が、これめちゃ日本の麦茶みたいな味がする!と、教えてくれた、スイス製麦茶を飲みながら、牧子に要望を伝える。

「ウィーン行ったことないし、私ツアーで行くの南米だから、ヨーロッパ初の旅行楽しそうだし、行ってもいいよ?あ、ただし、休業中ってことになるから、なるべく安いプランでお願い!できれば10万以内で!」

牧子は昔から、私の妹分で、乗りも良いし、話が早くて助かる。

「おけおけ。安ければ安いほどいいってことね?んじゃ、ホテルとか、電車とかの移動の手配は全部私がやっておくわ。」

ツアーコンダクターを仕事にしている牧子はマイルがたんまりたまっているので、ウィーンまでの往復航空券はマイルでとるのである。

あとは滞在費を抑えれば、ほいっとヨーロッパまでやってきてくれる。しめしめ。

「うん。マリちゃんに全部まかせるー。よろしくー。」

ということで、牧子と10日後に、ウィーンの空港で待ち合わせることとなった。


私はスイスのベルンから、牧子は東京から、オーストリアのウィーンの空港までやってきて、その空港の荷物受取場所(スーツケースがぐるぐる回っているあそこ)で、待ち合わせをした私たち。

なんと、私たちの飛行機到着時間は、30分違いだったのだ。

私が到着すると、すでに牧子はスーツケースを受け取り、そこで待っていた。

「ちょー到着時間近くない?無駄がなくていいね」

と、再会を喜ぶのといっしょに、30分しか違わない飛行機の到着時間に乾杯をする。

上記のように書くと、まるで私が海外旅行慣れしているような達人感がにおい立つが、私は最初に書いた通り、飛行機が嫌いなので海外旅行といえば、家族で行ったハワイと、学生の研修旅行で行ったフランス一週間の旅のみである。

とはいえ、順応性はゴキブリ並みだと思われる(札幌にゴキブリは生息してはいないが、物のたとえでね)


到着ゲートから外にでると、

「ミス、マリ タカハシ ウエルカム!」

と、英語で書かれたボードを持って待っている、黒いスーツのおじさんがいた。

今日から、私たちが泊まるのは、私がスイスで暇持て余していたときに、ぐぐりまくって見つけた短期旅行者用の安宿である。

通常ホテルなどを予約する際は、さまざまなホテルを集めた大手の予約サイトを経由して予約をとるのだが、この短期旅行者用アパートは、短期旅行者用アパートだけを数件集めただけの、小規模なサイトで、しかも、ドイツ語のみの表示。英語に切り替えるボタンすらなかった。

日本人の私にとっては、なかなかにハードルの高いマニアックなサイトである。

だがしかし。

ドイツ語だけで表示されていても、その表示された価格が安いことは理解できる。

安さにつられて、ドイツ語表示のそのサイトをグーグル翻訳で英語にかえ、さらにその英語を、解読するという手間をかけて予約したのである。

(その当時は、ドイツ語のサイトを直接日本語に自動翻訳すると、ほぼ理解のできない日本語が表示されたため)

グーグル翻訳を駆使して、英語で予約フォームからメッセージを送ると、ちゃんと、当日、空港までタクシーの利用はしますか?予約できますよ。とメッセージがかえって来たときは感無量だった。

ということで、空港から市街地の宿まで日本円で5000円程度のタクシーを予約しておいたので、スムーズに夜10時すぎの空港への到着だったが、宿まではスムーズな移動だった。

宿につくと、大柄なドイツ語しか話せないが、明るい雰囲気のおばちゃんが出迎えてくれて、部屋まで案内してくれ、二人とも、就寝したのである。

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