金の瞳

モナムール

第1話

大学構内の乱雑に入り組んだ薄暗い道から始まった。季節は春。俺は市内ではそれなりに名の知られた大学だが、外に出ると無名な大学に合格した。俺はそういった喧騒の外側にひっそりと息づくようなこの大学を気に入っていた。まだ肌寒い季節。長い入学説明の退屈さに倦んだのか、ふらりと野良猫のように赴くままに散歩していた。明るい日差しの下で朗らかに笑う人々に嫌気がさしたのだろうか。気がつけば、俺は陽の当たらない入り組んだ道に迷い込んでいた。こういったたしかに存在するけれど無関心に追いやられたような場所に安堵する自分に苦笑いする。ふと誰かに見られてる気がして辺りを見回すと金色の瞳が、こちらをじっと眺めているのに気がつく。肉体も、骨も何もかもを透かして、最も柔らかな内臓を突いたような鋭い痛みが走る。気がつけば、そんな猫など幻だったかのようにいなくなっていた。或いは、最初からそんなものはいなかったのか。帰りに、まだ夜は遠い青空に大学の先輩はサークルに呼びかけ、後輩はそれに応えていく賑やかな光景に足早に過ぎ去っていく。いずれは夜が来ると繰り返し想う。生温い風が夜気を帯びる瞬間がそう遠くはないうちに…。青空は暗闇に燃えていく。


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金の瞳 モナムール @gmapyon

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