第16話
「まりのはね、自分ひとりで部屋を独占できるからそんな世界観なんていってられるのよ。お姉ちゃんと一緒なら顔色気にしながらしか使えないでしょ。うちは狭いの。小さなマンションなのよ。姉妹そろって一人部屋なんて無理なんだから!」
京子が甲高く声を張り上げていった。まりのはその姿を見ていたが、ぽつりとつぶやく。
「……そうだよ」
しかし京子には聞こえていないのかなにも言わない。察してまりのが続ける。
「そうだよ。わかる……」
「なにが」
よく聞き取れなかったのか京子が聞き返す。聞き返されたまりのは先ほどまでとは異なり、神妙な面持ちで京子を見ていた。
「わかるよ、京子ちゃん」
「な、なにがよ」
雰囲気が変わり、京子は思わず腰が引けたようだった。しかしまりのは気にした様子もなく迫る。
「家が狭いことだよ! うちだっておんなじなんだから。京子ちゃんちがマンションならうちは団地なんだよ。狭いってことなら一緒なんだよ」
「そ、そうよ」
どういっていいのかわからない様子で、京子はただうなづく。まりのは涙を流すふりをしながら正面むかって京子へと抱き着いていった。
「そうでしょ? 京子ちゃんもわたしも悪いのは家が狭いことなんだよ。みかこちゃんみたいに部屋数がいっぱいあるおうちならこんなこと言いあったりする必要なんてないんだよ。それぞれ自分の部屋を好きなようにしていけばいいの。それができないのはふたりとも狭い家に住んでるからだよ!」
「それは……!」
言いたいことがわかったのか、京子も目を丸くしてうるませてきた。
「そうよ……その通りよまりの。すべては家が狭いことが問題なのよ」
こぶしを握った。そのまま天井につきつける。
「家が狭いから部屋も自由に使うことが出来ず、結局物も増やすことだって出来なくてこんな殺風景な部屋にしかならないんだわ」
「そうなんだよ!」
まりのが強くうなづく。
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