第15話
「で、でもそれは京子ちゃんが世の中にあわせてるだけで、京子ちゃん自身に独創性なんてないのは間違ってないもん。
そうだよ。そんな考え方する京子ちゃんこそ、この部屋にふさわしいんだよ。新しいものなんてなくて、合わせようとしてるだけ」
「な、なんですって⁉」
京子は気に障ったのかして目をむいて声を荒げた。だが一矢報いたと思えたまりのはにたにたと笑みを浮かべて嬉しそうだ。それがまた腹立たしいらしい。
「自分に必要なものをそろえてシンプルにしてるだけなのにどこが悪いのよ!」
「わたしだって自分に必要なものをそろえてあの部屋にしたんだよ。どこがちがうの⁉」
ふたりとも言い合っていた。
しかしその言い合いがちょっとずついつも通りになってきているような気がしてはなとみかこは喜ぶ。部屋の隅っこで口をはさむことなく京子とまりのの会話を聞いていたが、むっつりと口を開くこともなくスマホばかりをいじっているよりかはよほどましに感じられる。
(ちょっとよくなってきた気がするね)
(そうですわね)
とはいえこのまま昨日みたいに本当の言い合いになってしまっても困る。こちらから何かを言おうかどうか迷いながら、はなはみかこに尋ねた。
(このままで大丈夫かな。また昨日みたいになっちゃわない)
(どうでしょう……? でもちょっと楽しそうにおふたりとも話されているように見えますから、大丈夫ではないでしょうか)
確かに言い合いの中にも相手を押しつぶそうとするような威圧感がさほど感じられない。しかしこのままエキサイトしていけばいずれそうなるかもしれず、はなは多少心配が残っていた。
(でもまたけんかになっちゃわないかな……?)
(それはわかりませんけど……しばらくは大丈夫ではないでしょうか)
みかこのほうが楽観的だった。もしかしたらはなよりも友達に対する信頼感が強いのかもしれない。はなはみかこの言うことにうなづくと、そのまま同じようにして部屋の隅から見守るのだった。
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