第14話

「京子ちゃんはおもちゃ箱ひっくり返したみたいっていうけど、それこそわたしの個性で世界観なんだよ。誰にもまねできないような部屋を演出することこそが、わたしの作って来たもんなんだからね。京子ちゃんは物減らしただけじゃない」

「違うわよ! まりのが世界観だって言うんなら、この部屋こそ世界観があるのよ」

「どんな世界観なの」

「みかこの言う通り、シンプルさの中にある美しさよ!」

 先ほどの発言を取り上げられみかこは驚いたようだった。ちょっとだけ後ろに下がってはなの影に隠れようとする。しかしさすがにそんな隙間はなく目線を合わせないようにきょろきょろするだけだった。

「この部屋に世界観なんてないよ」

「あるわ。それこそシンプルで、鋭く、私のやらなければならないことをやれる部屋なの。まりのは楽しくて居心地よければいいかもしれないけど、私にはそんなもの必要ないのよ。だからなにもないの」

 ふんぞり返って胸を張った。それを見てまりのの頬がぷぅっと膨れる。

「そんなの世界観っていわないよ。世界観っていうのはね、一目見てわかるものなの。そしてわーって驚いて影響されるものなんだから。この部屋そんなのないもん」

「いいえあるわ。それは私と同じように目的のために一直線に向かっていく人間にしかわからないのよ。まりのには理解できないのよ」

 今度は腕を組み顎を上げて無理矢理まりのを見下ろそうとした。ますますむくれてまりのは下から眉を寄せて見つめる。そしてむっとしたまま反論した。

「そんなわからない世界観なんて世界観じゃないよ」

 それを聞いて京子は人の悪い笑みを浮かべた。まりのが怪訝な表情を浮かべ、警戒心を表わす。

「あら、まりのらしくないわね。それじゃ世間に理解されない独創的な世界観も世界観じゃないことになるじゃない。ならまりのが世界観だと思っているものも本当に世界観なのかしら。世間的には成績優秀な私みたいな人間の方を正しいと認めるに違いないわ」

「ぐ……」

 ふんぞりかえったまま胸に手を当て目を閉じる。その姿をまりのは眉を寄せたままくやし気に見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る