第13話
「それでもかわいい小物とか置いたっていいと思うよ。そんなのもないのは京子ちゃんのセンスも殺風景なんだよ」
「センスなんて問題ないわ。必要なのは将来よ。そのためには今を犠牲にするの。まりのは今を楽しんでるから将来を犠牲にするのよ」
「そんなことならないもんね。京子ちゃんこそいまのままでいけば殺風景なままの人生が待ってるんだから。今はセンスが殺風景なだけかもしれないけど、そのうち心まで殺風景になっちゃうよ」
「そんなことならないわよ!」
「わたしだってならないもん!」
ちょっと言い合いがいつも通りになってきだした気がする。部屋の隅ではなとみかこもほんの少し安心しだした。このまま続けていて大丈夫なのかわからなかったが、かといって下手に口をはさんで悪い方向へ向かわせても困る。はなとみかこは目を合わせたがなにも言わずに言い合いを見ていた。
「京子ちゃんわたしが一人っ子だから部屋を自由にできるっていうけど、京子ちゃんだってお姉ちゃん大学行ってから何年かたってるわけでしょ? ならその間に自分なりにカスタマイズできるじゃない。わたしだって5年くらいかかってるんだから、その二分の一か三分の一くらいは京子ちゃんなりの部屋になってなきゃおかしいよ」
「なってるわよ。勉強できるように片付いてるでしょ」
そういって手を広げた。いつの間にかスマホは床に置かれている。
「それが殺風景っていってるんじゃない。なにもないんだから」
「不必要なものが何もないのよ! いらないものはそぎ落とされた、完成された部屋なの!」
今度は立ち上がる。注意が手元から離れただけでもはなとみかこはうれしかった。
「まりのこそ人のこと言えるの。私の部屋殺風景なんて言うけど、まりのの部屋はごちゃごちゃしたおもちゃ箱ひっくり返したようなもんじゃない。中身なんて何もないわ」
「おもちゃ箱のなにが悪いのよ。楽しそうでいいじゃない」
「中身がないことを言ってるの」
「京子ちゃんの部屋は物理的に何もないよ」
まりのも立ち上がってふたりはにらみ合った。こちらもスマホは床に置かれている。
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