第12話
「大体まりのは部屋をかわいくなんて言ってるけど、もともと一人っ子でしょ。何年もかけて部屋作っていったっていうけど、最初から一人だからそんなこと出来るのよ。うちははなほどじゃないけど一応お姉ちゃんいたし、ふたりで同じ部屋使ってたから自分好みに部屋を仕立て上げるなんて真似できないのよ。それはまりのが生まれてからずっと一人だったからできたことだわ」
ふん、と鼻を鳴らしながら不満げに京子が言った。はなは自分の家を思い返して京子の言っていることはもっともだと思ったが、まりのがその言い分を納得して聞くのかはわからない。ちらと見る。
「それはそうかもしれないけど、かわいさのかけらもないのは京子ちゃんの問題だと思うな」
やはり納得はしてないらしい。
しかし京子はすぐに反論する。
「違うわよ。ふたりで使ってるんだから相手のこと考えて片づけないといけないのよ。そうなると自分の好みなんて後回しになるの。
そうでしょ、はな」
「え?」
いきなり話をふられて部屋の隅で驚いた。隣でみかこが肘で突っつく。目の端で確認すると瞳を輝かせていた。察するに、いつも通りの会話の糸口が引きよせられそうで、チャンス、と主張しているようにも感じられた。俄然緊張する。
「そ、そうだね。家族多いと中々自由には出来ないと思う」
なにを言えばいいかわからなかったが、とりあえずあたりさわりのない、しかし間違いなく本音を述べるに止まった。それでも部屋に入ってからはじめて京子とまともに口を聞けたことがうれしい。みかこも喜んでいるようだった。
「はなちゃんちは特別だよ。家族多いもん」
「でも姉弟で同じ部屋使ってるのは同じじゃない。数だけの問題じゃないと思うわ」
京子とまりのの間でも会話が成り立ってる。まだ言い合いの様相が残されているが、しかしいつも通りの言い合い程度にまで柔らかくなっていくかもしれない。
はなとみかこは期待したまなざしのままで京子とまりのを見続けるのであった。
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