第11話

 すっかり昨日のような言い合いになりそうになってしまってはなもみかこもどうしていいかわからなくなってしまった。いまさら普段通りの会話をして、いつも通りの関係にもっていこうということは出来そうにないと感じられる。部屋の隅にいたままエスカレートしていきそうな京子とまりのを黙ってみているしかない。それでもどうにかしたくて体育座りをしたままに肘でつつきあいながらこそこそとささやきあうのだった。

(どうしましょう……なんだかおふたりで盛り上がってしまいましたわ)

(うん……このままじゃ昨日と同じになっちゃうよ)

(青春の一ページとはいえ毎日は大変だと思いますの……)

(一日だってやだよ……)

 まだ日も沈みそうにない。このままあとどれくらい続けられるのかもわからない。それどころか今日だけで終わらなければ明日も同じように続けられてしまうのかもしれない。それだけは嫌だった。

(とにかくこのままじゃよくないよ。なんとかして元通りになってもらわなくっちゃ……-)

(ですけどどうしますの? 普段通りの会話を続けることはもう難しそうですわ)

(うん……でも放っておけないよ)

(それはわかりますけど……)

 三度振出しに戻ってしまった。結局京子とまりのが納得して解消してくれなければ言い合いはやまないのだろう。そう思うとなにをしても無駄なような気がしてくる。

(お互いに言いたいこと言わせとくしかないのかな)

(それも……たしかに青春ですわね)

 ちょっとうれしそうなみかこを見て、はなはそれもよくないような気がした。とにかかくなんとかして二人の感情をおさめなければならない。しかしその方法が見つからない。

(とにかく二人が話してる間に入ってななんとかなだめられるように頑張ろうよ)

(それくらいしか出来ることはないのでしょうか……)

 みかこが悲痛気に言う。はなも二人の方を見ながら同じ感情を持ったが、残念ながら他にできそうなことが思いつかなかったのだった。

(だってしばらくふたりとも続きそうだよ。こっちの話聞いてくれなさそうな気がする)

(それはそうかもしれません……)

(だからなんとか隙があったら入って、ふたりの気持ちをおさめよう)

(はい……)

 こうして方針とも言えないよな方針が部屋の隅でも決められたのだった。

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