第7話

「でも京子ちゃんの部屋ってきれいだよね。みかこちゃんもそう思わない?」

 ひとりで話していてもだめだと思ったはなは隣のみかこへと会話を投げた。一瞬驚いたようなみかこだったが、

「そうですわね。京子さん、きちんとなされていますから部屋もきれいになされているのですわ」

 ちゃんと意図をくんで応じてくれた。ほっとしてはなも会話を続ける。

「うん。きっと京子ちゃんなら汚い部屋に住んだりはしないんだろうな」

「あまり想像できませんわね」

 京子とまりのの方を強く意識しながらも、部屋の隅のままではなとみかこは会話を続けていた。このまま普段通りの会話を続けながら、そのうち残りの二人も参加してくれればいつも通りとなる。別段意識したわけでもないが、ふとそんな期待がはなとみかこの間では生まれているような気がした。

「でもはなさんもきっちりなさっている方だと思いますわ。ですからきっと京子さんみたいなきれいな部屋に住めますわよ」

「ううん。わたしは当分無理だよ。だって家に帰ったら家族多いもん。きれいにしようと思ってたって弟の誰かがぐちゃぐちゃにしちゃうんだから」

「まぁ、そうですの」

 みかこはちょっとうれしそうだった。自分と違う家庭に興味があるらしい。話がずれてはいけないので元に戻す。

「京子ちゃんだったらどこでもきれいに部屋を片づけるのかもしれないね。わたしも見習わなくっちゃ」

 ちらちらと京子の方を見ながらそう言った。京子はスマホをいじりながら顔も上げなかったが、はなの言ったことに返事はした。

「どうかしら。私もひとりだから片づけられるのかもしれないわね」

 ちょっと歩み寄ってくれたような気がしてはなはうれしかった。思わずみかこへと振り向くと、みかこも顔を輝かせていた。

「そんなことないよ。きっとひとりになったってわたしきれいに片づけられないと思うな。あ、もしかしたら大人数になれちゃって、ひとりになったらどうしたらいいかわからなくなっちゃうかもしれない。京子ちゃんはそんなことないと思う」

 必死に言葉を続ける。

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