第6話
部屋の隅にまで追いやられてしまった二人はまたも目で合図をし、お互いの不安を交換し合った。
(どうしよう……)
(どうしましょう……)
しかし目を合わせたからといって同じ感情から逃れられるわけでもない。思わず体育座りしてしまいながらスマホばかりを見ている二人を見る。ちょっと悲しかった。
それでも京子は一応返事をくれた。昨日から怒ったままでいるのかもしれないがそれでも応じてくれるだけの気持ちはあるのかもしれない。
まりのを見る。同じようにスマホを手にして視線を落とし、ずっといじり倒して指を動かしている。だが京子の方を見ようとはせず、むしろそっぽを向いたままのようにも見えた。つんと鼻をそらしたままに手元だけを見るように視界を狭めている。隣に京子がいることを見えなくしているようにも感じた。
だが京子も京子でわざとまりののことを無視しようとしているようにも感じられないこともない。はなとみかこが部屋の隅にまで離れてしまっているというのに、京子とまりのは隣り合ったままだ。そしてそれにもかかわらず無言をつらぬいている。そのため見えない圧力が二人の間で形成され、周囲へとまき散らされて部屋中に充満しているのだった。
それでも二人が隣に座ったままで離れようとしないのはお互いのことを気にし続けているからのようにも思えた。はなもみかこもこの雰囲気に耐えられず離れて距離をとったのに、当の本人たちはいまだ50㎝の距離のままだ。共にじっとしている。もしかしたら意地を張り続けているのかもしれない。昨日の言い合いのあと、相手にあやまらせようとしてプレッシャーを与え続けているのかもしれない。少し離れた場所から二人を見てそんなことをはなは思ったのだが、そのあおりをくらってしまう自分たちとしてはどうすればいいのか困ってしまうばかりなのであった。
(なに言えばいいのかな……)
(わかりません……)
目で訴えかけるも、みかこには首を横に振られるだけだった。なんとかしてこの状況は打破されなければならない。そうでなければ本当に陽が沈むまでこのままだ。いや、それどころか明日まで同じ時間が続けられるかもしれない。それだけはさけたかった。
意を決してはなはまた話しかけた。
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