第3話

 京子もまりのも変わらず手元ばかりを見つめている。相手のことなど眼中にないどころか、自分以外は存在していないかのようだった。それを見ているとはなは少しかなしくなった。

「でもこのままだとやだよ。やっぱり仲直りしてくれなくっちゃ」

「それは……そうですわね。おふたりともあのままじゃ……」

 みかこも二人を見る。部屋の隅に移動したこちらに気も向けてくれない。

「どうすれば仲直りしてくれるかな」

「わたくし、わかりませんわ」

 結局わからないままだった。しかしそれではなにも進まない。無理してはなは考えをひねり出す。

「二人ともスマホしてるから、仲良くしてってLINE送ろうか」

「いいですわねっ」

 ぱっとみかこが顔を輝かす。が、すぐに言い出しっぺの方が曇らせる。

「でもそんなことしたら余計こじれちゃいそうな気がする」

「それもそうですわね」

 みかこも肩を落とした。がすぐに顔を上げる。

「ならいっそのことまたご自分たちの言いたいことを言い合ってみてもらってはどうでしょうか」

「だ、駄目だよ! そんなことしたらまた昨日みたいになっちゃう」

 それだけはごめんだった。二日続けて言い合いは見てるほうでも嫌だ。

「ではどうしたらいいでしょうか……」

「う、うーん……」

 反対してみても代わりのアイデアが出るわけでもない。かといってそのままやってしまえばより状況はこじれる。どうしていいかわからない。

「このままなるようになるまで放っておくしかないんでしょうか」

「そんなのやだよ……まだずっとこのままいなきゃいけないの?」

 京子とまりのをまた見る。黙ったままなのに、なぜかピリピリとした電流が周りに漂っている。そのなかに居続けるとこちらまで感電してしまいそうだ。おだやかな空間になってほしい。

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