第22話
「な、なによなによ……まりののこと思っていつも言ってあげてるんじゃない。それなのにこんな風に言われて……!」
「だって京子ちゃんが人のこと好きにならなくてもかまわないなんていうから」
「そりゃあまりのはいいかもしれないけど、私なんてねぇ、地味なガリ勉で男の子になんとも思われたりなんかしないのよ! まりのみたいに浮かれた生き方してればいいけど、私にはそんなこと無理なのよ!」
「わたしだって京子ちゃんみたいな真似無理なんだから! だからっていつもいつもバカにしなくたっていいでしょ⁉」
どんどんエスカレートしているように見える。だがみかこはその姿までうっとりと眺めていた。
「い、いいわよいいわよ。どうせ私なんかかわいくもないしかわいげもないし、人を人とも思わないエゴイストよ。悪かったわね!」
そう言って部屋を飛び出していってしまった。窓を見るともう夕刻に近づいており、日も暮れかかっていた。
「ふん、なによ。京子ちゃんの馬鹿!」
まりのはまりのでまだ腹を立てているらしい。しかしみかこは楽しそうだった。
「青春ですわ……」
「そ、そうかな……」
ともかく収拾もつかなくなってしまったし、京子も出て行ってしまったのではなもみかこを連れて追いかけることにした。
「じゃ、じゃああたしたちも帰るねまりのちゃん」
「うん。またあしたね」
よこされる返事はあっけらかんとしていて明るかった。もしかしたら気にする必要はないのかもしれない。激しいやり取りのように見えた二人の言い合いも、ただじゃれているうちなのかもしれない。
しかし隣りでずっと見させられているはなはとっても疲れてしまうのだった。
結局みかこは感動したまま一緒に帰り、別れるまでうっとりと今日の出来事を繰り返しはなに言い聞かせ、八百屋が見えかけてからようやくひと心地つけた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます