第20話

「そんなことばっかり言ってる京子ちゃんじゃ、きっと誰も本当に好きになってくれる人なんていないんだから! そしたら心の底から京子ちゃんのこと助けてあげようとか、支えてあげようとかも思わないから、京子ちゃんたった一人で偉くなるしかないから時間かかって偉くなりきれないで終わっちゃうよ。そいで偉くなったとしてもひとりぼっちで、誰も親身になって心配してくれる人なんていなくなっちゃうんだからねっ⁉」

 立て続けにいいつのるまりのに京子はなにも言い返せないでいた。目を大きく見開いたまま、立ち尽くしている。

「いくら京子ちゃんがかしこくてお勉強が出来て、本当に偉くなったって、人のこと気にかけないような人間になっちゃったらおしまいなんだよ!」

まりのの方も目を大きくあけて汗びっしょりになりながら言っていた。

 はなはどうにも居心地悪くなってきて、本気のケンカにならなきゃいいと思って心配になってきたのだが、となりのお金持ちはそう思わないらしい。

「すばらしいですわ……!」

「え?」

 小さくつぶやくと、こちらも負けじと目を大きく見開いて言い合っている二人を見ている。さっきまで同じようにして避難し、困っていたのが嘘のようだ。

「まりのさん、どうもおかしいおかしいと思っていましたら、こんなにも京子さんのことを心配なされていたのですね……」

「えぇ⁉」

 驚いて声を上げてしまった。到底そうは思えない。まりのをじっと見つめた。恥ずかしながら、普段の意趣返しをしているようにしかはなには思えなかった。

「そ、そうかなぁ……」

 しかしみかこは感動したのか、ハンカチを取り出すと目の端をぬぐい始める。

「これが友情というものなのですわね……京子さんの将来を心配して、あえて悪者になりながらも必要なことを告げてあげる……青春ですわ」

「せ、青春かなぁ……」

 確かに必死になって言いあってる姿は青春に見えないこともない。けど中身はもっと普段通りの言い合いな気がした。

「きっと若い今しかできないことなのですわね……」

「そうなのかなぁ……」

 到底まねしてやってみたいと思えない、目の前の二人であった。

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