第14話

「だって京子ちゃんの事好きじゃないんだよ、結婚する人は。ならなんで京子ちゃんと一緒になってるのかっていえば、京子ちゃんが偉くていい生活させてもらえるからでしょ。ならもっといい生活できる人が目の前に現れれば、その人の方に行くよ」

「そんなことないわよ! どうしてそうなるの」

「そうだよ。だって、相手のこと助けてあげようとか支えてあげようとかさ、自分のこと放っておいてもしてあげようと思うわけでしょ。それは相手のこと好きじゃないとできないよ。それなのに京子ちゃんは好きでもないのに、自分の立場や能力でやってもらおうと思うわけでしょ。なら条件がもっと良ければそっち行くもんね。きっと」

「そ、そんなことないわよ!」

 また絶叫した。

 なんだか激しくなってきたのではなとみかこはさらに離れる。一メートルほど離れたところで、ふと気づいておせんべいの入った入れ物を引きよせてカーペットの上に置いた。

「別に私の事好きじゃなくったって、私が優秀だったらそのことで尊敬してくれるはずよ。好き嫌いっていうことなら、私の能力を好きになってくれればいいわ」

「でも京子ちゃんが好きじゃないのわかるし、相手も京子ちゃんのこと好きじゃないんでしょ。だったら、京子ちゃんほどじゃないけど優秀で、頑張ってる人がいればそっちの人を応援したいって思うことあるかもしれないじゃない。その人のほうが応援してあげたいって思うっていうことはさ、やっぱり好きだって思うことじゃないの? 

 それに能力だけでも好きでいいんなら、やっぱり好き嫌いあるじゃない」

「ぐっ……」

 また京子のほうが旗色が悪くなって来たようだった。はなとみかこは目配せをしていた。

「じゃあさじゃさ、京子ちゃんはすっごい偉い優秀な人がいたとしてさ、京子ちゃんのことを物のようにしか扱わない人のこと、助けてあげようって思うの」

「そ、それは……」

 言葉につまりかけたが、顔を上げて反対した。

「そんなの思わなくて当たり前よ。そこまで極端じゃないの。普通程度で好き嫌いが関係ないってことよ。私だって相手のこと物みたいに扱わないわ」

「なら京子ちゃんのいう普通程度の好きと、わたしの好きとどれくらいちがいがあるの。どうやってきめるの」

「そ、そんなの……」

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