第9話

「だ・か・ら、京子ちゃんは部屋を自分用だけじゃなくてお客さん用に作り上げるだけの余裕はないの。だからだから、きっと最終的にはそんなに偉くなれないよ」

「そんなことないわよ!」

 魂を込めて反対した。けれどもまりのはどこ吹く風で気楽に受け流す。

「ううん、そんなことある。だって京子ちゃん最初っから馬鹿にしてるもん。馬鹿にしてるのに、いきなり価値を認めてやりだすなんてこと無理だよ」

「出来るわよ!」

 むきになる。

「じゃあさ、今から一生懸命やってるわたしのこと、みとめてくれる?」

「う」

 再び言葉を詰まらせた。反対にまりのはにたりと笑みを浮かべる。

「ほらぁ、そんなことできないじゃない。将来必要になったときに、あ、まりのちゃんのいってたことは間違いなかったんだ、ってそう思えるのかなぁ?」

「ぐ、ぐぐ……」

 そう思うことは口惜しいのか、頬をゆがめ、口の端をつりあげ、眉をしかめさせ表情にまで現れていた。憎々し気ににらむ。

「ふふふのふ。やっぱり。そんな馬鹿にした態度のままじゃ、必要になったからっていって出来るわけないもーん」

「く、くうぅぅ……」

 悔しがってカーペットに突っ伏した。まりのは立ち上がると勝利の凱歌を上げた。

「うふふのふー、っと!」

 あまりの調子のよさにぱりぱりせんべいを食べていたはなも手をとめた。

「なんか今日すごいねまりのちゃん。いつもと違って京子ちゃんいいまかせちゃったよ」

「そうですわね。いつもと逆ですわ」

「でも京子ちゃんも少しいいすぎなところもあるからこれくらいなほうがいいのかな」

「ですが京子さんは元気なほうが京子さんらしいですわ」

 確かにはなもそう思った。今みたいにカーペットに突っ伏して静かなままなのは性に合わない。猛々しく自信を持っている姿のほうが頭にこびりついていた。

 しかしまりのはそうは思わないらしく、地に伏した京子へと言葉を押しとどめる様子はなかった。

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