第7話

「今一生懸命頑張らなくちゃいけない時に、こんな浮かれた部屋で楽しんでるなんて、まりのは将来をどぶに捨てたようなものよ」

「な、なんでそうなるの!」

 むっとしてたまらずまりのが声を荒げる。

「だってそうじゃない。人を招き入れるなんて最後にする事よ。まず自分が立派になってからじゃないと呼んだって来てくれないもの」

「そんなことないよ。きっと来てくれるもん」

「どうかしら。それはきっとまりのと同じ程度の相手でしかないわ」

 またも鼻を鳴らしてあしらおうとするが、しかしまりのは同じように鼻を鳴らして京子のまねをした。

「違うもん。だって京子ちゃんもみかこちゃんもはなちゃんも、うちに来てくれてるもん。

 京子ちゃん、わたしと同じ程度なの?」

「うぐっ……」

 うんともいやとも言えず黙り込んでしまった。まさかジレンマを投げかけられるとは思っていなかったらしい。

「そ、それは……今は学生だから、まだいいのよ」

 苦しまぎれに言った。とはいえ京子はまんざらでもない様子で顔を上げた。

 しかしすぐにまりのは言う。

「じゃあみかこちゃんは? みかこちゃんみたいなお金持ち、わたしみたいな部屋に来てくれないと思うけど」

「く、ぐ……」

 またも言葉につまったしまって何も言い返せない。

 いつも言い負かされているまりのはうれしそうな顔をしていた。反対に京子は土のような顔色になる。

 とはいえいつも通りに元気な様子なのではなは気にしなかった。みかこの隣でだされたおせんべいへと手を伸ばす。

「あ、はなさん、わたくしも一枚もらっていいでしょうか」

「いいんじゃないかな。まりのちゃんが出してくれたんだし」

 ちらっと見るがこちらの様子を気にかけてもいなそうだった。

「はい」

「ありがとうございます」

 ふたりしてぱりぱりと食むのだった。

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