第5話
「そうかしら。浮かれてるだけじゃないの、この部屋」
どうしても同意したくないらしい京子はまだ文句を口にする。しかし他の二人に認められたまりのは余裕をもって言い返した。
「そんなことないよ。むしろ京子ちゃんの部屋のほうが殺風景なんじゃない」
うふふ、と笑いを含み、ゆったりとカーペットの上に座りながら京子を見上げる。下からの眼差しにも関わらず、あたかも見下げられたように感じて京子は腹を立てた様子だった。
「失礼ね。私の部屋は余計なものがないの。質実剛健っていうのよ」
ふん、とまりのに対抗して大きく息を吐きながら同じく座る。はなとみかこの視線も二人にあわせて下がった。
「質実剛健も殺風景もそんなに変わらないよ。かわいくないんだもん」
「かわいいかわいくないは私には関係ないわ。だって集中できないんだもの。こんな部屋じゃ試験で一番なんてとれないわよ」
成績の話をされるとまりのもぐっと黙るしかない。確かに京子のほうがいい。それも圧倒的にいい。文句が言えない。
「そんな部屋人呼んでも楽しくないじゃない。京子ちゃんの勉強部屋、ううん、勉強事務所だよ」
ぷうと頬をふくらませまりのが文句を言う。しかし京子は同意する。
「当たり前じゃない。部屋なんて勉強するためにあるのよ。好きなものに囲まれてすごすためにあるわけじゃないわ。私の将来を約束してくれる、輝かしきゆりかごとしてあればいいのよ」
胸を張った。今度はまりのの方が納得したくないらしく、どうしても言い募る。
「そんなことないもん。お部屋はね、自分のためにもあるけど、人を呼ぶためにもあるんだよ」
「そうかしら」
「そうだよ。じゃあ、京子ちゃんちに行くとき、わたしたち京子ちゃんの勉強事務所にお邪魔してるの。違うでしょ」
「う……」
「たとえお仕事する場所、京子ちゃんにとって勉強する場所だとしても、お客さんを呼ぶときは応接間とか客間とかあるものじゃないの」
「そ、それは……」
言葉をつまらせてしまう。
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