第4話
「だってみかこなんてもっといい部屋住んでるじゃない」
それはまりのも認めざるを得ない。三人の視線がみかこをつらぬく。
「それはそうかもしれませんけど……」
「ほらっ!」
今度は京子が顔を輝かせた。
「ですがわたくしの部屋はまりのさんみたいに自分で作り上げたものではありませんわ。必要なものをどなたかが贈ってくださって、それで出来上がったものですからまりのさんみたいに自分の思った通りに作り上げた部屋ではありませんもの」
「ほらっ!」
次はまりのの方が顔を輝かせる。京子はくやしそうに口をゆがめた。
「聞いた、京子ちゃん。みかこちゃんもこの部屋いいっていってくれたよ」
「ぐっ……」
納得したくないようだが、なかなか言い返せる言葉も見つからないらしい。その間にまりのが自室を見回して言う。
「ふふ、やっぱり自分の好きなもので囲まれた部屋が一番なんだね。みかこちゃんみたいなお金持ちでも、この部屋にあるわたしらしさみたいなものだけはまねできないんだよ。この部屋こそがわたしのあかしなんだね」
うっとりと自室の在り方に浸りながら満足そうに眼を閉じている。
京子は黙ったままだ。やれることもないはなはぼーっと見ていたが、ふとまりのが目を開けてそのまま視線がぶつかった。
「はなちゃんはこの部屋どこがいいと思う?」
「え、えぇ?」
はなにまで意見が求められてきた。
「ええと、それは……」
困る。大家族でひっちゃかめっちゃかのはなの家と比べれば、片付いているだけでうらやましくも思えた。
「き、きれいなところかな?」
「でしょ⁉」
まりのは自分にいいように理解してくれたようで、嬉しそうに声をあげてくれた。また顔を輝かせる。そして京子はまたしかめていた。
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