第2話

「そうかしら……ちょっと下品なんじゃない」

 にこにことせんべいを差し出していたまりのの顔がこわばった。その様子をはなとみかこが見つめる。

「こんな同じ色ばかりの部屋じゃ集中できないわよ。なにもやらない人の部屋ね」

 ふん、と鼻を鳴らしながら京子が言い放つ。いまいましげに壁にかかったピンクの時計を見ている。顔が険しい。それをまたはなとみかこが見つめた。

「な、なによ!」

 まりのは立ち上がると京子のそばで見下ろした。それにつられて残りの二人も京子を首を動かす。

「この部屋のどこが下品だっていうの、京子ちゃん。とってもかわいいじゃない!」

 両手を広げて部屋の全面を示した。しかし京子はどこ吹く風で目を閉じたまま出されたお茶をすすっていた。

「全部よ。こんな部屋で勉強なんてできないわ。目がちかちかして気が散るもの」

「そんなことないもん。それは京子ちゃんの集中力が足りないんだよ」

 これにはカチンとしたようで京子も立ち上がった。はなもみかこも目線があがる。

「失礼ね。私はどこでだって集中できるわよ。成績が物語っているわ」

 うっ、と思わず一歩引いたが、まりのは負けなかった。

「そ、それは京子ちゃんが勉強得意なだけじゃない。それと同じようにわたしはかわいいのが得意なの」

「かわいくないわよ。下品だから」

 そっけなく答える。またその態度にまりのは腹が立ったらしい。

「なんなのよ京子ちゃん! わたしの部屋のなにが気に入らないっていうのよ!」

 叫んで軽くにらみつけるが、京子は正面から見返す。

「決まってるでしょ、こんな浮かれた部屋で喜んでるようなまりのが馬鹿みたいだって言ってるのよ!」

「ひ、ひどい! なによ、その言い方!」

 本当に腹が立ったようで目を吊り上げていた。はなとみかこはどうしていいかわからず互いに顔を見合わせてしまう。しかしだからといってなにも状況は変わりはしない。まりのはエキサイトしたままだった。

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