4日目 まりのの部屋

第1話

「いつ見てもかわいらしいお部屋ですわね」

「うん。みかこちゃんちとは違うけどはなやかだね」

「でしょ!」

 自室を褒められ鼻が高くなったらしいまりのは胸を張った。座る三人の前に、にこにこしたまま座る。はなとみかこを嬉しそうに見た。

「わたしもね、この部屋お気に入りなの。結構時間かけて作っていったんだよ。中学のころからコツコツはじめてこれだもん!」

 部屋は一面ピンクの品物で埋め尽くされており、どこを見ても部屋の主の姿が浮かんできそうだった。大小さまざまな小物が所狭しと置かれており、みな同じピンク色にもかかわらずすべてが少しずつ違い同じ色の中にも濃淡がある。時計やペンケース、ノートに本棚までピンクばかりで、空いた壁にはわざわざピンクで描かれたポスターを張り、床も畳なのにカーペットを敷いていくつものクッションが転がっていた。それだけでなく一見なんに使うの変わらないような、おそらく美容器具なんだろうと思えるプラスチックでできた使途不明の小道具もたくさんあった。

はなはちょっと手に取ってみる。くるくると回るのでふとももにあてて転がしてみた。よくわからない。

「これだけのもの集めるの大変だったんだよ。おこづかいコツコツためて気に入ったもの選んでいったんだから。ちょっとやそっとじゃ無理なんだからね」

 誇らしげに告げる。みかこはあこがれたように声を上げた。

「すばらしいですわ! まさにまりのさんのお城ですわね」

「え、そう……えへへ……」

 照れた様子で髪をいじった。

「わたくし、自分でこんなに欲しいものを集めたことなんてありませんわ。それをひとりでおこなってひとつの部屋までつくってしまうなんて、まさにまりのさんの理想を形にしたものですのね」

「そ、そうかなぁ……」

 はなはふと、みかこであればすべて上等な品物を与えられて揃えられてしまうからそう思うのかな、と思った。どちらが優れているのかちょっとわからない。

「まま、食べて食べて」

 そう言ってお茶うけに出したのは、木で出来た入れ物に並べられたおせんべいだった。海苔が巻かれていておいしそう。

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