第19話

 猛々しく言い合っていた。見れば京子の瞳には涙の一滴もなかった。

「でしたらやっぱりはなさんがいい、っていうお話になるんですの?」

「ちょ、ちょっとみかこちゃん……」

 余計な矛先が向いてきそうな気がして、はなはみかこの袖を引っぱった。気にもしてもらえない。

「そうよ。だから最初から言ってるじゃない。はなは恵まれてるのよ!」

「そうだよ。それは間違いないよね。はなちゃんはもうわたしたちが将来求めなければならないものを持ってるんだよ?」

 ふたりの視線がはなを射す。あわてて手をふってさえぎった。

「いやいやいや、そんなことないから。結構大変だから。あたしさっきも言ったよ」

「そうだけど……」

「……でも手に入らないんだもん」

 羨望の眼差しで見てくる友人に対しはなは困り果てていた。

「だ、だけど、ふたりが今言ったことだってそうなるとは限らないじゃない。京子ちゃんは偉くなって自分の仕事を助けてくれる人と結婚するかもしれないし、まりのちゃんだって格好よくてやさしい人と結婚できるかもしれないじゃない。お互いい言い合ってるからそんなふうにイメージしちゃうだけでさ、ふたりとも形は違えど努力してるんだし、うまくいくと思うな」

 とにかく火の粉をよせまいとほめあげた。まんざらでもない顔をする。

「そ、そうかな。やっぱりかわいいわたしにはカッコイイ男の子と一緒になれるかな」

「うんうん」

「や、やだ。私のこと助けてくれるようなそんな優秀な人見つかるかしら」

「きっと京子ちゃんなら大丈夫だよ。絶対京子ちゃんの優秀さを見抜く人が結婚相手だってば」

『えへへへ……』

 京子もまりのも背を合わせたままにへらにへらと笑っていた。とりあえずこれで満足してくれた様子で、ほっとはなは胸をなでおろした。

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