第14話

「やっぱり雇われ者の人生なんてこんなものなのね……はなの言う通りだわ。私は無理なことを望んでいるのよ」

「え」

 いきなり落ち込みだした。それを見て困惑する。はなだけでなくみかこもまりのもそう思ったらしい。

「どうしたんですの、京子さん。いつも元気に自分の将来を思い描いてるじゃありませんか」

「そうだよ。いつもの欲深な京子ちゃんはどうしたの。わたしだけじゃ馬鹿みたいだよ。一緒に頑張ろう」

 肩を抱いて慰めるのだが、京子はいたく気落ちしたらしくうつむいたまま顔を上げなかった。

「無理よ。だってはながさっき言ってたでしょ。自分の家族のこともちゃんと努力できない人間が、自分の人生のことなんてどうにかできないのよ。きっと私はこのままどうしようもなく、お父さんかお母さんみたいな人生を送るのよ……」

「そんなことないよ。京子ちゃんならきっと厭味ったらしいエリートになって人を小馬鹿にしながらエラそうな態度取れるよ」

 まりのがなぐさめてるのかわからない言葉をかける。

「別にお父さんやお母さんみたいになったっていいじゃない」

「嫌よ!」

 はなの言葉に京子は首を横に振った。

「家に帰ってきたらビール飲んで裸で寝転がっておならして、文句言わずにご飯出して一言もしゃべらないで嫌そうな顔してるような家庭はごめんだわ」

「そ、そんなこと言われても……」

 はなは自分の家を思い浮かべたが、あまり違わないような気がしてそんなに嫌がらなくても、とちょっと思った。

「はなはわからないのよ……だっていい家庭だから」

「……あまり変わらないけど……」

 しかし聞こえていないらしい。

「私の気持ちをわかってくれるのはまりのだけだわ……」

 そういって顔を上げた。

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