第13話
京子は目をそらしたまま口をつぐんでいた。目はまりのの方へと向けられ助けを求めていたのだが、まりのはまりので巻き込まれるのが嫌でそっぽをむいたまま知らぬふりをしている。そしてきゅうりに手を伸ばすとぽりぽりかじりだした。
「まぁまぁ、おふたりとも。そんなに怒鳴ってばかりでは疲れますわ」
みかこが助け舟を出す。同じようにきゅうりに手を伸ばしてぽりぽりかじる。
「とりあえず少し食べて気を落ち着かせてくださいまし」
「そ、そうね」
言われて京子もきゅうりを手に取った。口に含むと水気が心地いい。
はなも同じようにかじっていたが、その間誰も言葉を発さなかった。ただただぽりぽりときゅうりをかじる。
「なんだかかに食べてるみたい」
「そうね」
まりのと京子がつぶやく。しばしそのまま時間が流れた。
「そういえばなんでかにって日本で食べる時は黙ってしまうんでしょう」
「そうだね」
「海外では違うの」
はなが聞くとみかこがうなづく。
「はい。大抵なにかお料理されていますから」
「ってことは、やっぱり殻むくからだね。それって日本だけなのかな」
「多分……」
心もとなさそうにみかこがうなづく。
「私、みかこの家でお呼ばれして食べたとき以外にかに食べたことないわ」
「わたしも」
京子とまりのがまたつぶやいた。はなも続く。
「あたしもないな」
「かに食べれるようになりたい」
「きゅうりでもいいじゃない。あたしの家なら食べ放題だよ」
売れ残りもあるし、他の野菜の時もある。
なぜか京子は肩を落とした。
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