第11話

「ですけど、わたくしお父さまともお母さまともそんなに会えませんわ」

 みかこは口を尖らせた。

「だったら会えた時にたくさんやればいいんだよ。多分」

「そうでしょうか……」

 みかこはまだ不服そうだったが、まりのが横から口をはさんできた。

「それははなちゃんがいつも家族と一緒だからじゃないの。みかこちゃんはそれが出来ないからうらやましいんであってさ、当たり前にあるはなちゃんにはわからないんじゃないかな」

「そ、そうかな……」

 思わぬ正論にはなは困ってしまった。そう言われてしまってはみかこに言えることはない気もする。

「だからさ、やっぱりはなちゃんは恵まれてるんだよ」

「え、また⁉」

 同じ話に戻ってきた。思わず身構える。

「だってみかこちゃんはお金持ちだし、はなちゃんはいい家族持ちなわけじゃない。二人とも持ってるものがあるんだよ」

「その通りだわまりの!」

 京子が急に元気な声を出しだす。

「私たちは何も持ってないにもかかわらず、みかこだけでなくはなまで持ってるものがあったわけね。だからどうしても許せないような気持になったんだわ」

 びしぃっ、とまたはなへ指を突き付ける。指された方はどうしていいわかわらず、とりあえず手でその指をどかした。

「なんでそうなるのよ!」

「だってそうじゃない。私もまりのもなにも持ってないのよ。はなも同じだと思ってたけど、実はもう持ってたって話じゃない」

「どうして」

「決まってるじゃない。みかこみたいなお金持ちになりたいのは、安定した暮らしがしたいからじゃない。はなはみかこみたいなお金持ちじゃないけど、家族っていうものの中ではとても安定しているんだもの。それは今の時代、求めても簡単に手に入るものじゃないんだからね」

「そ、そうかなぁ……」

 納得いかないはなであった。

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