第10話

 思わぬ感想ではなはどう言っていいかわからなかった。確かに間違いなく、はなは家族のことが嫌ではない。

「そ、そうかな。そう見える?」

「見えますわ。はなさんはいつもご両親や弟さんのお話をされるときはとっても楽しそうですもの」

「え、そ、そうかなぁ」

 ちょっとうれしい。そうした気持ちが顔に出てしまっているのが自分でも分かった。

 しかしそれでまた火がつけられたのは他の二人だった。

「なんだ。やっぱりはなちゃん幸せなんじゃない。いいね、たくさんの家族で楽しそうで」

「まったくだわ。不便だなんて言って、本心では思ってないんじゃない」

 ぶーぶーと文句を言い出す。また続けて責められては困るので、はなは先んじて同じことを言った。

「じゃあ、やっぱりトイレ待たされたり、汗だくでもお風呂入れなかったり、自分のことより先に家の用事させられたりしてもいいのね」

『…………』

 それはいやらしくそっぽを向いてしまった。それではなは安心する。

「ですがはなさん、それだけ家族のことを大切に思われながら、どうしてわたくしたちが求めると嫌そうになさるのですか。わたくしたちだってはなさんみたいになりたいですわ」

 みかこはまだこだわっているらしい。

「別に嫌がってるわけじゃないけど……」

「そうですか? なんだかわたくしたちを近づけさせないようにしてるような気がしてしまいますけど……」

「そんなことないよ。ただなんだか強く迫ってくるから嫌になっただけだよ。それにさっきも言ったけど、家族なんて三人ともいるじゃない。それをあたしだけ特別なものみたいに言ってるのがよくわからなかったの」

「そうでしょうか……」

 はなはうなづく。

「そうだよ。だってみんなお父さんもお母さんもいるわけでしょ? だったら今いる家族を相手にして絆を強くすればいいじゃない。それをあたしだけ特別みたいに言われても困るもん」

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