第8話

「そ、そんなことないよ京子ちゃん。さっきから家族の絆家族の絆っていうけどね、うちみたいに家族が多いのだって困ることあるんだから!」

 聞いていれば他人事だと思って好き放題言うので黙ってられなかった。はなはたしかに家族が好きだが、だからといってなんでもかんでも好き勝手できるわけではない。

「だってね、ご飯だってみんなでいっせいに食べるから競争になるし、好きなものばかり食べてられないし、寝る時だって誰か起きててうるさいことだってあるし、起きたら起きたで洗面所は使えないし、トイレだってひとつしかないから誰か入ってたら我慢しなくちゃいけないんだよ。みかこちゃんみたいにトイレが5個も6個もあれば不便はないかもしれないけど、うんこしたいときなんて3人も並ばれたら地獄なんだからね!」

 あまりに攻め立てられ爆発し反論した。京子も少しはたじろぐかとおもったが、全然そんなことはない。

「それは不便かもしれないけど、絆の強さの現れじゃない。そうして不便を重ねていくことによってお互いの関係を強めていくのよ」

「じゃあ京子ちゃん、朝うんこしないで学校いけるの」

「う……」

 それはちょっと嫌らしい。

「少し帰ってくるの遅いとお肉残ってないんだよ。カレーすくうと具がないんだよ。ただ茶色いカレーだけがご飯にのってて、らっきょも福神漬けもみんな食べられちゃってるんだよ」

「そ、それは……」

 それもちょっと嫌らしい。

「それにうち弟ばっかりだから、男の子でみんな馬鹿だよ。家でもスカートめくりするようなやつだし、ばんばんセクハラするし、怒っても聞かないし、なんなら下品な復讐してくるんだよ、小学生だから」

「ううっ……」

 はっきりと眉をしかめだした。

 ここで折れてはまた言い募られると思ったはなは、胸を張ったままに宣言する。

「京子ちゃん、うちでやっていけるの? 家族の絆が結ばれた家は、結構大変なんだからね!」

「くっ……!」

 結局京子は膝をつくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る