第5話

「ちょ、ちょっとどうしちゃったのふたりとも。いつもと言ってること逆だよ!」

 一人孤立しそうになるので、必死になって言い立てた。だがみかこの興奮に巻き込まれたかのような二人に効果はない。

「そんなことないわよ。私、目がさめたの」

「うん。はなちゃんのほうがうらやましい」

 なにやら怪しい輝きを瞳に湛えだす。あわててはなも言葉を続けた。

「そんなことないよ。絶対。あたしなんかよりみんなのほうが幸せ、ううん、京子ちゃんもまりのちゃんもみかこちゃんも、三人とも幸せだよ」

 考えてみればみかこはともかく、京子もまりのもはなと大差ない生活でうらやまれるほどのことはない。それを伝えようと必死になって言うが聞き入れてはもらえなかった。

「そんなことないわ。だってはなは一人じゃないもの。うちにはお姉ちゃんいるけどもう家出ていったわ。残された私と両親だけじゃ、いざとなったときどうしようもないもの」

「うんうん。うちなんてひとりっ子だもんね。はなちゃんみたいに協力しようにも協力できる相手自体が家族の中にいないんだよ。それじゃいざとなったときどうしようもないよ」

 いざっていうときはどんな時なんだ、とはなは思い、

「そんな時には家族だけじゃなくて助けてくれる人いるはずだよ。だって人と人との絆が大切なんでしょ? なら家族だけが絆じゃなくてもいいじゃない」

 そう告げたが二人は首を振る。

「甘いわね、はな。さっきみかこも言ったでしょ。この世知がない世の中、家族以外の誰も助けてくれないのよ」

「そうだよ。みんな見て見ぬふりするだけで終わっちゃうんだから。家族だけだよ、そんなときでも助けてくれるの」

「そ、そんなことないよ」

 しかし二人はすっかり頭の中で凝り固まってしまったらしく、はなの言うことなんててんで聞きやしないのであった。

「さすがにわたくしもそんなことはないと思いますけど……」

「そうだよね、みかこちゃん!」

 話題の中心のみかこが異議を挟んでくれたので、はなも安心して同意した。

「そんなことないわ」

「そんなことないよ」

 しかし巻き込まれた方が反対した。

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