第3話

「それにきっとわたくしだけでなく、他の方々だって家族の中では仲良く過ごされているとは限りませんわ。ねぇ、京子さん、まりのさん」

『え?』

 いきなり言われてスマホから顔を上げる。

「別にそんなことないと思うけど」

「うん」

 あまり話を聞いていなかったのか、適当な返事だった。

「そんなことありませんわよ。だっていつもおふたりともご両親の文句おっしゃってるじゃありませんか」

『うっ……』

 言われれば思い当たるようで、言葉につまっていた。

「おふたりとも生まれがよければもっと幸せだったとか、お父さまが出世なされば楽だったとか、太いコネがあれば苦労もせずに済むとか、そんなことおっしゃってましたわ」

『うぅっ……!』

 そういえばそんなことも言っていたことを思い出し、はなはげんなりとして二人を見た。ちょっとばつが悪かったのかして京子もまりのも目をそらし、急にきゅうりへと手を伸ばすとぽりぽりかじりだした。

「そんなこと言ったかしら」

「おぼえてないよね」

 ぽりぽりぽりぽりかじり、素知らぬ顔をする。

「それなのにはなさんはこうしてしっかりしたご家庭にすごされているのですわ。これを誇りに思わなくってどうするんですの!」

 言って手を握りに来た。はなもかじっていたきゅうりから手をはなし口だけでくわえる。水にぬれた手もかまわずみかこは握っていた。

「別にそんなことないよ。普通だもん。京子ちゃんやまりのちゃんはどうか知らないけど」

「どういう意味よ」

 横で京子が非難の声を上げるが、みかこは気にした様子もなかった。続けて断言する。

「いいえ、すばらしいですわ!」

 そんなこと言われても当たり前のことをことさらあてつけられて、はなは困惑するばかりだった。

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