第22話

「な、なんてこと言うのはな……」

「そうだよ、はなちゃん……」

 京子とまりのが硬直してる。隣のみかこも大きく目を見開いていた。

「そうですわ……その通りですわ……!」

 感極まったように手をとると、すぐに他のふたりとも手を合わせた。

「わたくしの大切なものもはなさんと同じですわ。そう、それはみなさんと一緒にすごす時! これこそが宝物として将来残されていくものですわ!」

「え、えぇ……⁉」

 言ったはなも驚いた。半分はやけくその言葉にいたく感銘されて返す言葉もない。

「京子さん、まりのさん。わたくしたちいがみ合っていて間違っていたと思いませんか。はなさんのおっしゃることが本当に正しいのではないでしょうか」

「そうね……まさかはながそんなこというなんて……」

「うぅ……はなちゃんのいう通りだよ。わたしたち、友達だもんね」

 なにやらいがみ合っていたふたりまでもが感極まっている。ちょっと自分の言いたかったこととニュアンスがずれているような気もしたが、もう夕方なのでこれ以上揉めてもらっては困る。きっ、と表情を引き締めるとはなは言った。

「そう。三人ともわかってくれてうれしい。そうなの。友達こそ一番の宝物じゃないかな」

「そうですわ。間違いありません!」

 特にみかこが熱を帯び、全員の手を握りながら涙を流していた。その横では京子とまりのも目じりをぬぐい、ちょっと鼻水まで出ていた。

 あまりに一緒くたに盛り上がってしまっているためはなの気持ちはどんどん冷静になっていく。なんだか本当に自分ひとり取り残されてしまったような気がしたが、かといってこの輪の中に同じように溶け込んで過ごせる自信もない。仕方なく似たような真似をしてあわせていた。

 目を転じると夕日も陰り藍色へと移り変わっていった。そして扉に向くとタキシードを着た老人が嬉しそうにうなづいてこちらを見ている。

 なんだか本当にこれでいいのかな、と思うのはなであった。

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