第21話
ふと思い浮かんだ。結局弟たちや家族が大切なのであって、物はどうでもいいのかもしれない。しかしそれを口にするのはなんだがはばかられるような気もした。とはいえ代わりに言えるものも思いつかない。自然悩んでうめいた。
「う、うぅん……」
「なにかあるでしょ?」
期待するかのような様子でまりのが尋ねる。どう答えていいかわからないでいたが、ぐいぐい寄ってきて顔を近づけるので、その圧迫感から逃れたくてつい言ってしまった。
「か、家族……?」
しかし言われた意味はわからないようで、三人ともきょとんとしていた。
「どういう意味?」
「た、大切なものは家族……かなぁ?」
なんて、と続けようとしたら猛反発を受けた。
「そんなこと聞いてるんじゃないよ!」
「そうよ! 欲のない子ね。そういうことじゃないの! まりのの言う通りよ!」
「ずるいですわはなさん! わたくしもそういうものが欲しいんですのに、すでに持ってらっしゃるなんて!」
三者三様に責めたてられる。しかしそう悪い答えを述べたつもりもないのではなもむっとして返した。
「な、なによ。いえっていったからいったんじゃない。それなのにそんな無茶苦茶にいわなくたっていいでしょ」
欲しいもの欲しいものといったって、結局一番大切なものは人なのだ、という自然な答えに達したというのにそう反発されてはたまらない。はなはさらに言い立てた。
「それなら別に家族じゃなくったっていいよ。友達でもいいもん! あたしは京子ちゃんもまりのちゃんもみかこちゃんも大切だもんね。だから欲しいもんなんて今ある物で十分なんだから。
あたしはみんなと一緒にいる時が大切なの!」
言われた三人は衝撃を受けたように固まってしまった。ようやく意味のない追及から逃れられそうではなはほっと一息をついた。このままならなんとかなるだろう。ふと窓の外を見ればもう夕日が落ちかけていた。
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