第20話

「そ、そう……? あたしにはそうしか思えないけど……」

「はなちゃん、なに聞いてるの。わたしたちは別に人のものが欲しいわけじゃないんだよ」

「そうよ。みかこがうらやましすぎるのよ」

 言って部屋を指さす。広すぎてどこを指しているのかもわからない。

「こんな部屋、私たち一生かかっても住むことなんてできないわ」

「そうだよ。これは人のものを欲しがってるとかじゃないの。みかこちゃんの人生が欲しいの」

 正直に、まっすぐな瞳で告げてくる。あまりに正直なのでなにも言い返せなかった。

「そ、そう」

『そう!』

 ふたりそろって力強い。

 だがその中に入らないみかこも異論を述べだした。

「わたくしも欲しい欲しいと思っているわけではありませんのよ。そうではなくって、やっぱり物ばかりを求めるだけじゃなくって、もっと大切なものがあるとそういいたいだけですわ」

「そ、そう」

「そうですわ!」

 先ほどの返事につられて同じように答えても、みかこは気にせずふたりと同じように力強くうなづくのだった。

 なんだかますますはなは自分ひとりが取り残されてしまっているような気がしてきたが、だからといって一緒になってなにを欲しがればいいのかもよくわからない。それを見透かしたのか、まりのが聞いてくる。

「はなちゃんはなにか欲しいものないの。わたしたちやみかこちゃんみたいに欲しいものってあるんじゃないの」

「欲しいもの……?」

 思いつかない。しかし三人の視線を浴びていると、それが悪いことのようにも思えてきた。

「な、なにかなぁ……」

 適当に思いつかせようと頑張るのだが、なにも浮かんでは来なかった。

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