第18話

「そうなんだ……」

 そばにある違う物の方にばかり目がいく中、どう答えていいかわからずとりあえずそう言う。

「ですからわたくし、たったひとつの思い出のある物なんて選べませんし、思いつきませんの。本当、うらやましいですわ。京子さんもまりのさんも……」

 嘘はなさそうなのだが、それにまたふたりが反応しだした。

「悪かったわね! どうせうちはひとつくらいしかないわよ」

「そうだよ。こんなにいっぱいあって選べないなんて贅沢だよ!」

 元の木阿弥に戻った。

「まぁまぁ、ふたりとも。みかこちゃんだって悪気があっていってるわけじゃないんだし……」

 このまま同じことを続けられては困るのではなが割って入る。ふたりはうなり声をあげながらみかこを見ていた。

「そんなこといって、はなはくやしくないの。私とてもくやしい!」

「そうだよ、はなちゃん、うらやましくないの⁉」

 熱心さがみかこからはなへと向き直ってしまった。こちらへと熱量が迫ってきたはなは困惑したまま答える。

「そ、そんなことないよ」

『ある!』

 断言されてしまった。

 かといってふたりが思うほどに強い感情を持たないはなはどういっていいかわからない。ちょっと気おされながらもたどたどしく言う。

「け、けど、うちはどっちにしろ弟たちがいるからあたしの物なんてあってもぐちゃぐちゃになっちゃうだけだから、どうせ残んないし……」

「それとこれとは別なのよ!」

「そうだよ! はなちゃんだってこんな豪邸に住めばそんなこと気にしなくてよくなるんだよ」

 たしかに一部屋ごっちゃに詰め込まれているのと比べれば、みかこの家なら個室を持てるだろう。

「けど……」

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