第18話
「そうなんだ……」
そばにある違う物の方にばかり目がいく中、どう答えていいかわからずとりあえずそう言う。
「ですからわたくし、たったひとつの思い出のある物なんて選べませんし、思いつきませんの。本当、うらやましいですわ。京子さんもまりのさんも……」
嘘はなさそうなのだが、それにまたふたりが反応しだした。
「悪かったわね! どうせうちはひとつくらいしかないわよ」
「そうだよ。こんなにいっぱいあって選べないなんて贅沢だよ!」
元の木阿弥に戻った。
「まぁまぁ、ふたりとも。みかこちゃんだって悪気があっていってるわけじゃないんだし……」
このまま同じことを続けられては困るのではなが割って入る。ふたりはうなり声をあげながらみかこを見ていた。
「そんなこといって、はなはくやしくないの。私とてもくやしい!」
「そうだよ、はなちゃん、うらやましくないの⁉」
熱心さがみかこからはなへと向き直ってしまった。こちらへと熱量が迫ってきたはなは困惑したまま答える。
「そ、そんなことないよ」
『ある!』
断言されてしまった。
かといってふたりが思うほどに強い感情を持たないはなはどういっていいかわからない。ちょっと気おされながらもたどたどしく言う。
「け、けど、うちはどっちにしろ弟たちがいるからあたしの物なんてあってもぐちゃぐちゃになっちゃうだけだから、どうせ残んないし……」
「それとこれとは別なのよ!」
「そうだよ! はなちゃんだってこんな豪邸に住めばそんなこと気にしなくてよくなるんだよ」
たしかに一部屋ごっちゃに詰め込まれているのと比べれば、みかこの家なら個室を持てるだろう。
「けど……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます