第16話

「だって、それって京子ちゃんわたしのことかわいいっていってくれてるってことでしょ?」

「な……っ⁉」

 いきなり言われて言葉につまる。その間にまりのは自分の言いたいことを詰め込んだ。

「だってわたしならぬいぐるみが似合ってるなんて、わたしがぬいぐるみの似合うかわいい女の子だっていってくれてるようなものだもんね。ありがとう、京子ちゃん。今まで恥ずかしがっていわなかったかもしれないけど、やっぱりわたしのことそう思ってくれてたのね。うん。わかってた。わかってたよ。京子ちゃんだってわたしのことかわいいって思ってるってわかってた」

「そんなわけないでしょ⁉」

 テーブルに手をついて立ち上がる。衝撃でカップがゆれたが今はそんなこと気にしていないようだった。

「だってそうじゃない。京子ちゃんは人形じゃに合わなくって、わたしがぬいぐるみなら似合うんでしょ? ならわたしのことかわいい、って認めてくれたんじゃない」

「そんなこと一言も言ってないでしょ! どうしてそうなるのよ」

 しかしまりのはにたにたと笑いながら続ける。

「だってそうじゃない。いわなくても同じだよ。だって京子ちゃんはお人形が似合わなくって、でもわたしはぬいぐるみが似合う。そこには京子ちゃんなりの違いがあるわけで、それは自分はかわいくないから人形が似合わないけど、わたしはかわいいからかわいいぬいぐるみも似合う、ってことだもん」

 かわいい、かわいいを連発し、京子へと迫った。

 京子はまったく同意する様子はなかったが、口をはさむ隙も与えずにいいつのるまりのに押し切られそうになっていた。なんとか言い返そうと頑張る。

「誰もそんなこと思ってないわよ! ま、まりのがかわいいなんて、いちっっっっども思ったことないわ」

「うふふ、やだもう、むりしちゃって。いいんだよそんなこと。いわなくってもわかってるもん。顔に出てるよ京子ちゃん」

 まるで子供をあやすかのように言うと、わざわざ同じように立ち上がって京子の肩をつかんで座らせ、頭の上をなでなでした。

「ば、馬鹿にしないでよ!」

「うふふ」

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