第14話

 進退いきづまってどうしようもなくなったが、それでもまだ京子はあえいだ。

「そもそもどうしてそんなこと知りたがるのよ。べ、べつにいいじゃない、人がなにを大切にしていようと」

「でも知りたいんですの」

 しかしみかこは引かなかった。むしろ隠されることによってより興をかきたてられる様子だった。

「だってわたくし、本当にうらやましいんですのよ。いくら高価なものを贈られても、それを大切に思える理由がなければどんなものでも一緒じゃありませんか。わたくしにとって特別なもの、なによりも大切に思える物こそそばに置いておきたいと思うじゃありませんか。違いまして、京子さん」

「う……」

 真摯にまっすぐと言われてしまってははぐらかすのも悪い。思わず正面から受け止めてしまい、ますます逃げずらくなってしまった。

「で、でも本当に私そんな大切な物ないし……」

「いえ、ありますわ。だっていつもと京子さん違いますもの。いつもならもっと堂々とないっていってまうわ。そうして口ごもるのは、きっとあるに違いないんです」

 普段ならみかこは見逃すであろう変化までかぎつけて京子を離さなかった。テーブルを挟んで向かいでもまりのとはながうなづく。

「う、うぅ……わ、わかったわよ」

「え?」

「わかったわよ! 言えばいいんでしょ、言えば!」

「まぁ」

 ぱぁ、とみかこの顔がさらに輝いた。代わりに京子のほうが暗く沈む。

「で、でも笑わないでよ」

「笑いませんわ」

「馬鹿にするのもなしよ」

「馬鹿になんてしませんわ」

「本当?」

「もちろんです!」

 なにがなんでも聞きたいみかこは熱心にうなづき続けた。

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