第12話

「そんなの、お金に代えられるわけないじゃない。でも、それとこれとは別なのよ。大切な物をお金に代えられるかどうかじゃないの、大切な物っていうものを、お金を関係なしに思い浮かべられるかどうか、っていうことが違うのよ!」

 なんとか言い切った。京子は自分でもよくいえたと満足そうに背筋を伸ばしている。

「じゃあ京子ちゃんの大切な物ってなんなの」

 また思わずはなは口をついて言ってしまった。京子がぴたりと動きが止まる。

「参考書とか?」

「なんでよっ⁉」

 さすがにそれは違ったらしい。怒られた。

「そういえば京子ちゃんって大切な物ってイメージわかないよね。わたしぬいぐるみだったけど、みかこちゃんは結局なんなの?」

 不思議そうにまりのが尋ねるが、みかこも首をかしげてしまった。

「それが……よく考えてみてもわからないんですの。ですからまりのさんみたいにすぐに思いついて答えられるのがうらやましいんですわ」

「あ、そうなんだ」

 まりのも意外そうに声を上げた。もしかしたら本当に大切な物を求めているのかもしれない。

「はなちゃんは?」

「あたし?」

 問われて困惑する。みかこのように物があふれているわけではないが、思いつかない。

「うーん、あたしも思いつかないなぁ……弟たちがいるから、あんまり自分だけのものってなかったような気がする」

 仕方がないのでその理由を述べた。だがまりのは納得した。

「そっか。お姉ちゃんだもんね。兄弟多いとそうなのかも」

 そしてくるりと京子のほうへと向く。

「じゃあ京子ちゃんそんなことないよね。妹の末っ子でしょ、たしか」

 しかし言われた方は黙っていた。数秒そのままでいたので重ねてまりのが聞く。

「違ったっけ」

「そ、そうよ」

 なんとも歯切れ悪く返事が返ってきた。

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