第5話

「やっぱり!」

 京子が叫ぶ。まりのも力なくテーブルに突っ伏した。

「結局高いんじゃないの⁉ まりの、そんなことしてたらテーブルが汚れるわよ」

「――!」

 あわてて顔を上げ、服の袖で表面をぬぐいまくった。

「き、傷とかついてないよね⁉」

 血眼になってテーブルの表面を見る。まりのの目には大丈夫そうに見えた。心配そうにみかこへと目をむけた。

「大丈夫ですわよ。おじさまだってお友達がつけた傷をとやかくなんていったりしませんわ」

「そ、そうかな……」

 穏やかに微笑む表情を見ていたら安心できそうだったが、しかし値段がわからぬままなので完全にぬぐえない。

「じゃ、じゃあ、あの椅子はどうしたの」

 テーブルだけでなく他の物まで気になってきた。指さした先にはこれまた繊細な意匠が足から背にかけて施された一脚だった。

「あれはイタリアのお知り合いから贈られたものですわ」

「高いの⁉」

「さぁ……わたくし残念ながら存じ上げていませんので……」

 さほど関心もなく断りをいれられる。納得いかない京子はまた指をさした。

「じゃああのベッドは⁉」

「あぁ、あれはおばあさまからの贈り物ですわ。わたくしが小学校に入ったころに一人で寝れるようにベッドを買ってもらいましたの。おかげですぐに一人で眠れるようになりましたのよ」

 今度はちょっと自慢気に言った。みかこなりの思い出の品なのだ、ということは理解できたが、自宅の敷布団を思い浮かべて京子は嫌になった。

「た。高いの……?」

「さぁ……?」

 しかし値段に関しては不服そうにしか返事が返ってこない。どうしていいかわからず京子はベッドを凝視するばかりだった。

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