2日目 みかこの部屋
第1話
「…………」
「なんか納得いかないわ」
「不公平だよ」
三人とも同じ顔で漠然と部屋を見回していた。
「なにがですの?」
一人不思議そうにみかこが首をかしげる。三人は不平そうにお嬢さまを見た。
「なにって、決まってるじゃない、この部屋よ!」
「そうだよ。なにこれ、部屋? っていうか昔の絵の中みたいじゃない!」
「宮殿みたい……」
通り三軒両隣すべて入りそうな広さに、天井にはシャンデリア。椅子、テーブルには細かな彫刻が施され、床には目の細かく色彩豊かなカーペット。遠く目を凝らして見てみれば店外付きのベッドの存在に気づき、入ってきた扉へと目をむければタキシードで身を固めた老人が立っている。
初めて来たわけでもないのだが、来るたびに文句を言った。
「いつも見てるじゃありませんか」
『いつ見ても驚くの!』
京子とまりのが吠えた。はなもうなづく。
しかしみかこは不思議そうに首を傾けるだけで不服そうに口を尖らせるだけだった。
「そうでしょうか……わたくしだってみなさんのおうちに行ったときには驚いていますのよ?」
『ぐっ……』
おそらくその驚きは今の自分たちの驚きを反転させたものだろうと想像でき、京子もまりのも口をつぐんでしまう。
「まぁ、うちは野菜ばっかりだから」
「はなさんのおうちはとても楽しいですわっ!」
八百屋の風景を思い浮かべながらみかこが手を合わせる。心底楽しそうだった。
「どうせ私たちは狭いマンションの一室よ……」
「うちは団地だもん……」
サラリーマンと公務員の娘二人は、うらみがましい声でうめく。けれどもみかこにはなんの反感も浮かばせることにはならなかったようだ。
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