第20話
「あら、はなさんの八百屋さんはきっと経営不振になんか陥りませんわ」
「なんでよ」
きっ、と京子がみかこをにらむ。しかし気にも留めずに続ける。
「だってうちの食卓ははなさんの家からお野菜買ってますのよ。うちがある限りはなさんの家から注文がなくなることはありませんわ」
『なっ……』
思わぬ伏兵にふたりが絶句する。はなを挟んだまま京子とまりのは目を合わせあった。そして手を伸ばして握る。
「これだわ」
「そうだね、これだよ」
また意気投合する。目の前ではなは邪魔だった。でも一応聞いてあげる。
「なにがこれなの」
ふたりともはなを見た。四つの目玉が二つの目を射抜く。
「決まってるじゃない、最終的に巨大な得意先を持つのよ」
「そうそう、みかこちゃんみたいな超大物をつかんでおけばなにしたってうまくいくよ」
急に頬を薔薇色に染めて立ち上がった。自然はなも視線を上げる。
「気づかなかったわ……どれだけ勉強して使える部下を持ってもそれだけじゃ駄目なのね……」
「そうだよ。いい男つかまえるだけじゃ駄目なんだよ。その先にもっと大きな相手をつかんでなきゃいけなかったんだよ」
くるりとみかこを見る。
「いいことを教えてくれたわ、みかこ。はなのやり方が一番正しかったのね」
「ううん、それよりもみかこちゃんだよ。みかこちゃんを目標にすればいいんだよ」
それぞれの相手を見る。見られた方はどうしていいかわからず見返すだけだった。
「はなに決まってるじゃない。求めるものはただ一つ、巨大な取引先よ」
「そうだよ。だからみかこちゃんがいいんじゃない。だってその張本人なんだから」
またにらみ合いだした。和やかな雰囲気がすぐに崩れる。
「おかしいわよ、まりの。求めるべきものはみかこみたいな相手じゃない。だったら目標はそれを実際にやってるはなに設定するべきよ」
「ちがうよ、そうじゃなくってみかこちゃん本人こそ目標にするべきなんだよ」
なにやらまた揉めだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます