第18話

「べ、勉強は男漁りと違うからいいのよ」

「でもやることわたしと一緒じゃない!」

 苦しまぎれの言い分もすぐに切り返された。

「そ、そんなことないわよ。べ、勉強はみんなやろうとするわ」

「ならかわいくなろうとすることだって、みんなやってるもん」

「ぐ……」

 先ほどまでと違ってまりのの方が押している。自分の欲を自覚できる分だけ強いのかもしれない。京子は勉強ということを隠れみのにしてるのかな、とはなは思った。しかしそろそろ退屈していた。

「だいたいね、京子ちゃんは自分に出来るから勉強してるわけでしょ。それならわたしだって自分に出来ることだからかわいくなろうとしてるんだよ。それなのに勉強ばかり出来るほうが偉そうにするのはおかしいよ。結局目指すところなんて一緒じゃない。満たされた生活なんだよ⁉」

 言いながら横目でみかこを見る。のほほんと微笑んでいた。

「こうなりたくないの⁉ いちいちこんな言い合いしてなくて、ただ笑って見てられるだけなんだよ!」

 指をさして強調した。それでも気にせずみかこは微笑む。

「な、なりたいわよ……なりたいに決まってるじゃない⁉」

 京子も絞り出すような声で言った。同じようにみかこを指さす。

「だってこんな呑気に人生を送れるなんてうらやましい以外に何があるっていうの⁉ わ、私だってねぇ、必死になって勉強なんかしたくないのよ。でもね、うちはサラリーマンなの。コネも人脈も縁故もなにもないのよ! 手に入るのは学歴くらいしかないの。だからしょうがないじゃない!」

「うちだってそうだよ! 公務員だよ、他にどうしろっていうのよ。京子ちゃんはいいじゃない、勉強できるんだから。でもわたしは馬鹿なのよ、勉強できないの、嫌いなの! それなら好きで得意なかわいくなることで将来を切り開いたっていいじゃない!」

 互いに魂の叫びを言い合った。そのうち感極まったのか二人は抱きしめあう。それを見ながらみかこはまたうんうんとうなづきながらハンカチで目の端をぬぐっていた。はなはちょっとついていけてなかった。ほんの少しさびしい

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