第16話
しばらくそのままそっぽをむいたままだった。みかことはなは気にした様子もなく放って話しだす。
「でもさ、みかこちゃんも偉い人ばかりとあってて疲れないの」
考えてみれば自分たちとつき合っててつきあえ切れているのだから、あまり偉い印象を持ちえない。それともこうして友達つき合いしているほうが滅相もないことなのだろうか、とちょっと自分から見ても間抜けに見えるみかこを見て聞いた。
「別に疲れたりしませんわよ。はなさんたちとお話していることとそう変わりませんもの」
「そう? でもアラブの王様とはちょっと違うと思うけど」
そんな人がうちの八百屋で白菜買いに来たら、どれを選んで渡してあげればいいか、ちょっと悩んでしまう。見当もつかない。
「う~ん……それはありますわ。時々何を話題にされているのかわからないこともありますから……」
「あ、やっぱり」
いくらお嬢さまでも王様といえばさすがに常識が違うのだろう。
「だってどんならくだが一番早く走るのか、そんな特徴教えてもらってもわたくしにはわからないんですの。むこうではらくだのレースはとっても人気があるんだそうですけど、わたくし、どうしても興味がわかないものでして……」
「……それは仕方ないと思うな」
そんなもんがあるのか、と胸中驚いた。
「それに比べればはなさんがお話されるお野菜の選び方のほうが理解できますわ」
「……それと比べられるの……?」
別におかしいことではないのかもしれないが、なんとなく釈然としないはなである。
「みなさんそれぞれ違うお話をされますから聞いていても楽しいですわよ」
「みかこちゃんはそうかもしれないけど……」
どちらかといえばみかこの話のほうがぶっ飛んでて聞いてて面白い。
しかしみかこのほうは本当にそう思っているのかきらきらと顔を輝かせて言った。
「だって京子さんとまりのさんのお話でも、わたくし普段ならわからないことばかりですもの。将来のこと心配したことなんて、わたくしありませんわ! 支えられるものがない方々って、こうして悩むんですのね!」
『なんですって⁉』
黙り込んでいた二人が声を出した。視線は険しくみかこをむいている。
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