第15話
「そんなことないわよ!」
激しい様子にまりのがとまどう。さっきまでの共感が消し飛ぶ。
「どうして。わたしのやりかたのほうがきっということ聞いてくれるもん」
「そんなわけないでしょ! まりのの言うこと聞くなんて馬鹿な男に決まってるじゃない」
また元に戻ったようだった。ふたりは距離を取り合って互いににらみつける。
「そんなのわからないじゃない! すっごい偉くなる人でもめろめろになるくらいわたしがかわいくなればいいんだから!」
「そんな色香に迷うやつなんて偉くなれないわ!」
激しい火花が散った。だがそれを見てみかこはまたもうなづいた。
「うんうん、青春ですわ」
今度は腕を組んでいる。
「…………」
はなははなでころころ変わるふたりの言い合いをどうしていいかわからなかった。どちらかといえばいつものことで、またかと思って見すごしていればいい気もした。ので、急須に手を伸ばすと空の湯呑にお茶をそそぐ。
「あら、はなさん。わたくしにも一杯くださいな」
「うん、どうぞ」
とぽとぽとぽ……とそそいで二人して飲む。一服ついた。
「だいたいね、京子ちゃんみたいな難しいことばかり言ってたら誰も言うこと聞いてくれないと思うよ!」
「難しくないわよ! 私の言ってることなんか難しいっていう方が馬鹿なのよ」
「ば……馬鹿ってなによ! どうせわたしは成績悪いわよ!」
「なら成績上げればいいでしょ。だから一緒に勉強しようっていってるんじゃないのよ!」
「勉強嫌いなんだから!」
「私だってどうせ地味のガリ勉でかわいくなんかなれないわよ!」
その間にも言い合いはエスカレートしていき罵倒合戦となりつつあった。ちゃぶ台を挟んだ向かい側で、残りの二人は我関せずにお茶を飲み続ける。気づけば三杯ほど飲み終えていたのだった。
「もういいわ。まりのとは話さない!」
「わたしだって京子ちゃんとは話さないからっ!」
いつのまにか決裂に至ったらしい。
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