第5話

「で、でも、京子ちゃんは勉強で頑張ってるかもしれないけど、わたしだって頑張ってることあるもん」

「頑張ってること?」

 瞳の中の炎が少し落ち着く。その間に口を挟ませまいと早口でまくし立てた。

「そうそう、だってわたしだってかわいくなるのに一生懸命だもん。だってほら、京子ちゃんみたいに自分で頑張って活躍できる人はいいじゃん? でもわたしみたいなおばかさんはいくら勉強したって頭よくならないもんね。うん、そうだよ。頑張りどころが違うんだと思うな。だから京子ちゃんみたいな人はそれが一番いいかもしれないけど、わたしなんかだと結局失敗しちゃううまくいかないことしてることになると思うの。つまりむいてないっていうの? そんなわけだから、京子ちゃんみたいに自分で頑張れる人をつかまえるのが一番いいと思うのね。だって自分でするよりも、京子ちゃんみたいに立派な人の方がうまくやれるんだもの。それをむいてないわたしがやったとしても京子ちゃんのうしろついて走っていくぐらいじゃない。だからそうしたことやってくれるような男の人見つけるためにかわいくなるの」

 とりあえず話をそらしたくていいつのる。しかしどちらかといえば逆効果だったと内心思った。

「まりの、今時何言ってるの」

 瞳の炎がますます燃えてしまった。がしっ、と肩までつかまれ逃れられなくされてしまう。ひぃ、とまたも内心悲鳴を上げて目で周りに助けを求めるも、みかこは楽しそうにこちらを見ているだけだったし、はなはやっぱりかりんとうを前歯でかじっていた。

「いい、男に頼ってうまくいくなんてご時世じゃないの。わかるでしょ。自分のお父さんを思い返してみなさい」

 京子はそういってビール缶持って酔いつぶれている父の姿を思い浮かべた。まりのもまた自分の父親を思い浮かべて息を吐いた。

「はぁ……」

 また思い当たることが重なるようで、そのままたたみを見つめてしまう。

「そんなことないよ。うちはお父さんよく働いてるよ。立派だと思うけどな」

 はなが口をはさむ。無邪気な、衒いのない笑顔に二人はますます肩を落とすのだった。

「そうね……尊敬できる、立派なお父さんならいいわよね」

「八百屋さんだって、自分でお店持ってるんだもんね、経営者だもんね……」

 たたみの目をゆびでつつきながら言う。

「あら、そんなことどうということではないじゃないですか」

 みかこが胸をふんぞり返す。ふたりは顔を上げてみかこを見た。

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