第2話
「そもそも今日は私いそがしいって言ったじゃない。それなのになんでうちでやるのよ」
不服げに唇をとがらせるのだが、そう思うの京子だけのようだった。
「だって順番だったもんね」
「そうですわ。昨日ははなさん。一昨日はまりのさん。そして明日はわたくし。ですから今日は京子さん……あらやだ、冗談になってしまいましたわ」
「つまらないよ、みかこちゃん」
みかこはてへっと舌を出して額を叩いた。
「なんだかみかこちゃんのセンスも反応もとっても古い気がする……」
「お金持ちって、世の中の動きと関係なくお金持ちだから、感覚も化石みたいなのかな……」
「まぁひどい! お金持ち差別ですわ!」
みかこは立ち上がって大仰に天を仰いだ。その様子も古いと三人は思った。
「そんなことどうでもいいのよ、私は明日塾の試験だって言ったでしょ! 前日に遊んでる時間はないの」
普通の感覚であれば試験前日に友達と集まって時間を潰すなんてことはありえない。そう京子は思うのだが、目の前の友達たちはそう思わないらしい。
「夜時間があるじゃないですか」
「夜だけじゃ足りないでしょ、今からやっときたいのよ」
「昼間だって学校で勉強してるじゃありませんの」
「学校だけで足りないから塾行ってるのに、その塾での成績のために家で時間を無駄にするわけにはいかないでしょ」
「勉強だけが人生ではありませんわ」
「お金持ちは将来安定してるからそんなこと言えるのよ!」
とうとう絶叫した。もはや壊滅寸前の中流サラリーマンにぎりぎり引っかかっていようかという京子の家の家計状況では、優雅なみかこの話ではついていけない。
「それにね、みかこはいいけどはなもまりのもいいの! 将来どうなるのかわからないのよ」
しかしはなはのんきにかりんとうをついばんでいた。
「あたしは八百屋継ぐからいいもん」
「ぐ……そうだったわ。はなんちは自営業だったわね……
まりの!」
しかしまりのはさっさと視線を外して、かりんとうを両手に持ち一本ずつ食べていた。食べかすがたたみに落ちる。
「ちょっと、聞いてるの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます