廊下


扉の外は、死体だらけだった。

死体というか、なんというか、なんというか……まだ生きてる人間もいるのだけれど、




「……ぁ……え………」

「……誰?」




誰かわからない。

制服は確かにここのだけれど、顔が潰れてる訳では無いのだけれど、私はこの人を知らない。


知らない人には、近付いてはいけない。

危ないから。




「…けて」

「…何があったんですか?」




恐らく 助けて と言いたいのだろう。

でも近付けない。知らない人だ。

それにもう、死にかけている。伝染るかもしれない。




「…………げ………」




申し訳ないけれど。

素通りして廊下を進む。



私の頭の中では、何かの授業で観させられた集団感染の映像が流れていた。

あれは確か……道徳とか、そんな気がする。遠い国の、でも近い、悲劇だった。そのなんとかかんとかに伝染った人間は、全身の穴から血が出て死ぬとか。呪いだと考えられてるとか、これはCGだとか、色々言い合って、…馬鹿らしいと思ってたんだけど。今までは。


なんとなく、似ている気がする。

いや…血塗れになってるからそうかなと思うだけで、見たところ傷は無いし…皆……皆知らない人だけど……



と考えて、ふと気付く。私は全裸だったな。

いくら死体が山積みというこの訳の分からない状態でも、いつまでも全裸で歩くわけには行かない。




「服を探しに行かなきゃ。私の制服…」




あるなら教室だろうか。教室ってどこかな。

にしてもどうして私一人だけ生きてるんだろう。




「…ん?」




探せばどこかに同じような人がいるかもしれないのに、どうして 私一人だけ と思ったんだろう。



まるで知ってるみたいじゃない。

知らないよ、何も。

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