06

ついに卒業式の日を迎えた。

春からは大学生になる。

みんな、それぞれの夢に向かってバラバラに旅立つんだ。


高校3年間を懐かしみ、友人と一通りの別れを告げ、私は最後にテニス部のコートへ向かった。

高校生活の中で、一番思い入れのある場所。


「村田先輩」


ふいに名前を呼ばれて振り向くと、そこには学生服の竹内くんがいた。

ジャージ姿しか見慣れていない私は、その新鮮さに若干ドキドキする。


「ご卒業おめでとうございます」


例によって礼儀正しい挨拶をする竹内くんが、なんだか「らしいな」と思ってクスリと笑ってしまった。


「ありがとう。部活、見に行けなくてごめんね。これからも頑張ってね!」

「先輩、ちゃんと見ててくれましたよね」

「え?」


何のことかわからずキョトンとしていると、竹内くんは続けて言った。


「教室から、テニスコート見てくれてましたよね」


ハッとなって、頬が紅くなるのを感じた。

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