06
ついに卒業式の日を迎えた。
春からは大学生になる。
みんな、それぞれの夢に向かってバラバラに旅立つんだ。
高校3年間を懐かしみ、友人と一通りの別れを告げ、私は最後にテニス部のコートへ向かった。
高校生活の中で、一番思い入れのある場所。
「村田先輩」
ふいに名前を呼ばれて振り向くと、そこには学生服の竹内くんがいた。
ジャージ姿しか見慣れていない私は、その新鮮さに若干ドキドキする。
「ご卒業おめでとうございます」
例によって礼儀正しい挨拶をする竹内くんが、なんだか「らしいな」と思ってクスリと笑ってしまった。
「ありがとう。部活、見に行けなくてごめんね。これからも頑張ってね!」
「先輩、ちゃんと見ててくれましたよね」
「え?」
何のことかわからずキョトンとしていると、竹内くんは続けて言った。
「教室から、テニスコート見てくれてましたよね」
ハッとなって、頬が紅くなるのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます