86「修行の終わり」
訓練はあっという間に二日を終えて、三日目の朝。
死んでしまうのではないかと思うほど過酷な訓練を受けたレダとエンジーは、泥のように眠り、疲れと精神的疲労を取ると、太陽が顔を出すと同時に起きた。
「……おはようございます、レダ先生」
「おはよう、エンジー」
エンジーの抱き枕にされているレダは、もっと寝ていたいと考えてしまったが、起きなければならない、とよろよろ起き上がる。
「コーヒーでも淹れよう」
「手伝います」
昨晩はまともに食事ができないほど疲弊していた。
ふたりは、朝日が眩しいのではなく、空腹で起きたのだ。
「か、身体が痛い……筋肉痛が昨日よりもひどい」
「僕もです」
内心、翌日に来たのでまだ若い、とレダはちょっとだけ喜んでいた。
昨晩の焚き火跡に薪を並べ火をつける。ケトルをこぼれないように置いて、アイテムボックスからコーヒー豆を取り出した。
豆を挽き、お湯が沸くのを待つ。
その間に、パンを用意してバターを塗り、生ハムとチーズのスライスを重ねる。
トマトを取り出し、輪切りにしてその上に置く。
そしてパンを挟めば、簡単なサンドイッチだ。
人数分、作り終えた頃にはお湯も沸いていた。
「エンジー頼むよ」
「はい」
エンジーがレダに変わりコーヒーを淹れる。
香ばしい匂いが広がる。
「できました」
「こっちもできたよ。はい」
「ありがとうございます!」
木皿に二人前のサンドイッチを並べ、エンジーに手渡した。
もともと少食のエンジーだが、魔力が枯渇するほど使い、疲弊しているせいかよく食べている。
きっといつも世話を焼いていたミナが今のエンジーを見れば、満足するだろう。
「……ナオミには悪いけど、先にいただこうか」
「そうですね」
ナオミはレダたちに先に朝食を食べているように言っている。
魔力を使い空腹になるとわかっているからだろう。
できることなら一緒に食べたいが、レダとエンジーも我慢ができなかった。
「正直、こんなに自分が食べたいって感情を制御できないなんて思わなかったよ」
「僕もです」
「じゃあ、いただきます!」
「いただきます!」
まず、コーヒーを一口。
苦味と、糖分を摂取するために入れた砂糖の甘味が脳と胃に染み渡った。
食用が今以上に暴れ、レダは大きく血を開けてサンドイッチにかぶりつく。
パンの麦の香りと、生ハムの塩辛さ、トマトの酸味と甘味が心地よい。
息継ぎを忘れてしまうのではないかと不安になる程、勢いよく食べていく。
――あっという間に一人前を食べ終え、二人前に取り掛かる。
もしかしたら足りないかもしれない。
そんなことを思いながら、ぺろり、とサンドイッチを全て食べ終えた。
少し足りない気がしたが、満腹だと動けないし、最悪吐いてしまう可能性があるので控えた。
食後のコーヒーを飲み、エンジーと一緒に太陽の光を反射して輝く湖面を眺めている。
静かな時間だ。
「――レダ! エンジー!」
しかし、その静かな時間は、テントから飛び出してきたナオミによって終わりを告げる。
「ナオミ?」
「ナオミ様?」
どうかしたのか、とレダたちが問う前にナオミは叫んだ。
「――奴が来るのだ!」
〜〜あとがき〜〜
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